第7回「こんなスピードで進むとは」 ロースクール論議、改革前夜の攻防

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編集委員・豊秀一
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 「ロースクール」構想は1990年末の司法制度改革議論の中で突如浮上してきたものだ。大学法学部を廃止して米国のようなロースクールを目指すのか、それとも法学部や司法研修所を前提としつつ「日本型」を探るのか。連載第2回では、司法制度改革審議会がスタートする「前夜」の関係者の動きを描く。

 ギリシャ神話の女神「テミス」は両手にてんびんと剣を持つ。司法の公正さと正義を表す象徴だ。司法制度のあり方を考える「テミスの審判」第2部のテーマは、改革の中核とされた「法科大学院」。新しい法曹養成制度として期待されながらも、曲折を経て岐路に立つ現状を、制度設計に関わった人々の証言から浮き彫りにする。

議論の先駆けになった論文

 「日本の新しい法曹養成システム ハーバード・ロースクールの法学教育を念頭において」

 98年2月、こんなタイトルの論文が法律雑誌に上下2回、掲載された。

 法学専門教育を行う機関として大学院の修士課程にアメリカ式のロースクールを設けるべきだと提案する内容で、本格的な議論の先駆けとなった。

 筆者は弁護士の柳田幸男(89)。60年に弁護士となった柳田は、65年に米国のハーバード大学に留学。国際的な弁護士として活躍しながら、91年にハーバード・ロースクールから客員教授に招かれた。ハーバード大の評議員、ロースクールの運営諮問委員を務めるなど、米国のロースクールの教育や運営にも深く関わるという経歴を持つ。

 戦後の日本の法曹養成は、大学法学部卒業者でなくても、誰でも司法試験を受けることができ、その合格者を対象として司法研修所で、法律実務に関する知識や技術、職業意識や倫理観を学ぶという仕組みが長く続いてきた。

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「実現は難しいと考えていた」

 柳田案の特徴は、こうした戦…

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