届いた入園通知「東大合格の気分」 女性が語る「保活」の苦労

照井琢見
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 【愛媛】「子育て環境の充実」「子育てしやすいまち」。4年前、前回の松山市議会議員選挙で53人中20人の候補が、選挙公報で子育て支援を公約に掲げた。その訴えは子育ての現場にどこまで届いているのだろうか。

 市内の病院で総務スタッフとして働く酒井亜希さん(32)は、3人の子どもを育てている。次女(1)の保育所探しが、「本当に大変だった」と振り返る。

 次女の妊娠中、2020年3月に離婚した酒井さん。上の2人を育てた経験から「自宅近くの保育所を探していた」。

 でも自宅は市中心部からほど近い場所。希望した保育所は人気があって通らなかった。次女を20年9月に出産した後は、朝のラッシュ時には車で40分ほどかかる保育所に預けた。

 希望を通す上でネックになったのは、酒井さんの働き方がパートタイムだったこと。当時働いていた病院でフルタイム勤務を希望したが、認められなかった。「小さい子がいるから長く働けないとか、母子家庭だからとか言われて、職場の理解を得られなかった」

 松山市保育・幼稚園課によると、同市の場合、保育所の入園選考は点数制をとっている。入園を希望する場合、まず親の就労状況などから、世帯あたりの「基準点数」がつけられる。

 たとえば、両親とも月160時間以上働いていれば、10点。父親が月160時間以上働いていても、母親が月64時間以上80時間未満であれば7点になる。点数が高いほど、選考で有利になる仕組みだ。

 長く働けないから、保育所の希望が通らない。希望の保育所に通えないから、満足に働けない。「同じところをぐるぐるしている気持ちになった。母子家庭に限らず、共働き世帯の女性も同じ苦労をすると思う」

 酒井さんの苦労には、もう一つ要因がある。0~2歳児を預かる「地域型保育事業所」を避けたのだ。ここは原則として、満3歳になった年度末に卒園することになっている。

 「3歳からの預け先が見つからないと、仕事を辞めるしかない」と酒井さん。小学校入学まで預けられる施設に条件を絞った。

 地域型保育事業所は制度上、3歳からの預け先となる「連携施設」を確保することが決まっている。ただ、市内で地域型保育事業所を経営する男性(49)は「現実とは乖離(かいり)している」と話す。

 連携施設の立地などの条件が折り合わなければ、保護者が連携施設への入園を希望しないこともある。連携先も、入園するか分からない子に備えて、毎年決まった入園枠を確保するのは難しい。「市が転園先をコーディネートする余地はあるんじゃないか」と男性は指摘する。

 松山市保育・幼稚園課の担当者は「入園選考の際に点を加算することで対応している。市の裁量ではこれが精いっぱい」と話す。年齢制限で卒園する子どもの加算点は4点。だが、それでも希望が通らないことはあり、「幼稚園の預かり保育も案内している」という。

 酒井さんの場合、職場で交渉の末、勤務時間を延ばして、保育所を探す「保活」を続けた。希望する保育所の入園通知が届いたのは翌21年2月。「東大に合格した気分。本当ハッピーでした」と振り返る。

 4月から車で5分の認可保育所に次女を預け、その後に転職。今はフルタイムで働いている。「もう一度保活をしろと言われても、もうできない。希望の保育所に入れたのは、恵まれていたと思う」と酒井さん。

 松山市内の待機児童数は21年4月時点で25人。17年の88人と比べると63人減っている。だが、保活に苦労した酒井さんにとって、政治家の「子育て支援」というかけ声は「響かない」という。

 「子どもや働く女性の現実に対して、本当に目を向けてくれる人を選びたい」(照井琢見)

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