第9回8ちゃん作った僕は「間違っていた」 ネットの群衆が生んだQアノン

有料会員記事Qアノン

ニュージャージー州アトランティックシティー=藤原学思

前回のあらすじ

なぜ、彼らは支離滅裂な主張を信じるのか。どのようにこれほどの規模になったのか。そして、「Q」とはだれか――。「Qアノン」に注目するジャーナリストや研究者たちの出口が見えない闘いを紹介します。

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 電動車椅子に乗って、彼は自宅の裏口から現れた。

 フレドリック・ブレンナン、28歳。匿名掲示板「8chan(ちゃん)」を作った青年だ。

 8ちゃんは、陰謀論集団「Qアノン」が信奉する「Q」の主な投稿先だった。Qアノンは8ちゃんを通じて世界に広がったとも言える。

 ブレンナンはリモコンを使い、自宅前に止めたバンの扉を開ける。ブレンナン用の特別仕様で、座席がないバンの後方に乗り込む。「ひどい見た目で申し訳ない」。整っているとは言いがたい頭をかいて、そう告げた。「写真撮影は、また後日にしてくれないかな」

 私は運転席に座り、ブレンナンから頼まれていたマクドナルドのバーガーとポテトを手渡す。そしてそこから計3日間、10時間以上に及ぶ取材を始めた。

Qアノン

「世界は小児性愛者の集団によって支配されており、悪魔の儀式として性的虐待や人食い、人身売買に手を染めている」という陰謀論、またはそれらを信じる人たちを指す。信奉者はそうした集団を「ディープステート」(影の政府)とみなし、民主党の政治家やハリウッドスターらが所属していると考えている。

「だって、他にやることがなかったから」

 ブレンナンは1994年、ニューヨーク州に生まれた。生まれつき、「骨形成不全症」という難病がある。骨がもろく、手足が曲がっている。

 障害は「深刻なタイプ」で、これまでにした骨折は「数えきれない。けど、数百回以上」。その障害が、彼の人生に大きな影響を及ぼすことになる。

 ケガをしないようにと、幼少期をいつも室内で過ごすことを余儀なくされたブレンナン。「ふつうの子どものように過ごすことは、許されなかった」

 それに加え、父親からのネグレクトも経験する。「本来なら幼少期に受けられるはずの手術も、受けさせてもらえなかった」。振り込まれているはずの福祉金は、父親の趣味の車へと消えていった。

 「父が死んでも、僕は悲しまない。葬式に行くつもりもない」

 匿名掲示板を知ったのは20…

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