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障害とは何か 障害当事者が進行役 DET研修を体験

前田基行
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 「伊香保温泉 バリアフリーに磨き」――。昨年末、そんな記事を書いたところ、インターネットのラジオ「朝日新聞ポッドキャスト」から番組への出演を依頼された。ニュースの背景、取材の動機などを話してほしいと言われ、準備をしながら、「障害」についての勉強不足をあらためて痛感した。そんな折、群馬県渋川市で障害について学ぶ研修があると聞き、参加させてもらった。

 2月25日、渋川市民会館で開かれたのは「障害平等研修」(DET)。障害とは何か。障害はどこにあるのか――。そんなテーマについて障害当事者が進行役となって、参加者と対話しながら考える。

 この日の進行役は「DET群馬」代表の飯島邦敏さん(49)=伊勢崎市=と細野直久さん(54)=玉村町。飯島さんは38歳の時に難病で、細野さんは16歳の時に交通事故で、それぞれ車いすユーザーとなった。

 「障害とは○○である」。30秒で○○を書いてください――。

 研修が始まるや、約30人の参加者にこんな質問が投げかけられた。

 ぱっと思いついたのが「体が不自由な状態」。紙に書いて、回答を見せ合った後ろの席の女性は「本人が気にして隠そうとする事柄」と書いていた。スマートフォンでも入力し、参加者の回答が前の大型スクリーンに映し出された。「機能の差による壁」「出来ないこと」といった回答が目に付いた。

 いったん、その質問は置いて、次の課題へ。「車いすの女性」のイラストがスクリーンに示され、細野さんが「障害はどこにありますか?」と問いかけた。

 私の頭に真っ先に浮かんだのは「車いすの女性」そのものだった。ところが、車いすの女性の周りに買い物中の店内の様子が描かれると、印象が一変。車いすの女性は階段の前で困っているように見え、所狭しと並ぶ商品は取りにくそうだった。「障害は女性ではなく、店の『段差』や『狭い通路』にあるんだ」

 会場を回るスタッフに伝えると、「子どもたちはたくさん見つけますよ」。ほかの参加者が会場で発言し、「介助者がいないこと」「入り口を示す矢印がわかりにくい」などと次々と「障害」を見つけていくのを見て、自分の想像力の乏しさを情けなく思った。

 続くワークショップは、障害者と健常者の立場が逆転した社会をドラマ仕立てに再現した映像を上映。それが終わると、再び、「障害とは○○である」の質問が投げかけられた。

 私の回答は「体が不自由だったり、人と違ったりすることに配慮しない社会のあり方」に変わった。後ろの席の女性も「周囲が排他的な態度をとること」と書いていた。ほかの参加者の回答も、「社会の仕組み」「周囲の無理解」などと、「社会」や「環境」といった言葉が増えていた。

 障害は「個人の問題」ではなく、「社会が生み出しているもの」。そんな「気付き」をもらった約2時間半の研修だった。

 「この研修は正解が一つあるというものではありません。みなさんで答えを考え、つくっていく時間です」と飯島さん。最後に、こう呼びかけた。

 「大事なのは障害がどこにあるのかを見抜くこと。原因が分かれば、解決先はおのずと見つかります。あとは行動するだけです」(前田基行)

     ◇

 DETは「Disability Equality Training」(障害平等研修)の略。1990年代後半に英国で障害者差別禁止法を推進するための研修として開始。国内では2014年から本格的な取り組みが始まった。DET群馬(事務局・伊勢崎市)は、飯島さんや細野さんたち車いす利用者の3人で16年に設立し、これまでに役所や企業、学校などで260回を超える研修を開催し、延べ約1万2千人が受講している。

 渋川市は「共生社会実現のまち」を掲げ、この2年間で役所や学校で15回のバリアフリーセミナーを開催している。新年度も継続する予定だ。

参加者の声

 不動産関係の仕事をしている会社員の新井雄太さん(29)=前橋市=は、研修を受けて「障害のとらえ方が変わった」と話す。顧客には外国籍の人も少なくなく、「契約書などの難しい日本語が、相手にとってはわかりにくく、『障害』と感じるのではないかと気付かされた。こうした見えにくい障害も意識して対応したいと思った」という。

 渋川市の赤城自然園で窓口業務を担当している千木良美知代さん(57)も「社会や環境が障害を生み出しているなんて、これまで考えてもいなかったので勉強になった。仕事に生かしていきたい」と話した。