子どもの危険が「いつの間にか」 地震後の焦り 盲点と心構えとは

滝沢卓
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 深夜の地震はどうしても慌ててしまいます。幼児がいる家庭では怖がったり泣いたりして、保護者も余裕がないケースも少なくありません。散らかった部屋の片付けや断水への備えなど、冷静に行動しようとしても、日頃の注意が無意識のうちに薄れて、子どもにとって危ない状況が生まれているかもしれません。そんな「盲点」と心構えについて、子どもの事故予防に取り組む2人に聞きました。

ボタン電池や電気ケトル、子どもの危険は?

 揺れがおさまった後にふと家の中を見渡すと、棚から飛び出た皿が割れ、電気ケトルも倒れ、リモコンも机から落ちている。住んでいる地域に津波注意報は出ておらず、避難する必要はなさそうだが、断水になったら困るので急いで風呂の浴槽に水をため始めた――。

 もし幼児がいる家でこんな状況だと、皿の破片でケガ、こぼれた熱湯やケトル内部に触れてやけど、リモコンから外れたボタン電池を誤飲、浴槽に誤って落ちて溺れるといった危険がある。

 災害が起きていない普段なら、誤飲しかねないものは手の届かない場所に置き、入浴後の浴槽に湯を残さず、浴室ドアの高いところに補助ロックをかけておくなど、仮に大人が目を離したとしても子どもにとって安全な環境をつくり、注意できる。

いつもと違って焦っていると

 しかし、大阪大学大学院人間科学研究科で特任研究員として子どもの事故予防活動に取り組む岡真裕美さんは、「普段とは違うことが起きて焦っていると、大人であっても日頃の注意力はどうしても薄まってしまう」と話す。

 ほかにも電気やガスが止まり、カセットコンロを使う場面は、IH調理機器が普及して火に慣れていない幼児にとって、珍しく見えることがある。地震で壊れた家具を少しの間だけであっても、ベランダに置けば踏み台のようになる。片付けの時に窓をあけ、ほかの作業の合間に子どもが転落してしまう危険もある。

 また、自治体の役所で罹災(りさい)証明をもらったり、支援物資を受け取ったりするために長蛇の列に並ぶなど、いつもとは違う急ぎの用事に気を取られて、「『まあいいか』と油断しがち」になることもある。

 岡さんは「イレギュラーな時は注意力が乏しくなる、ということを事前に知っておくことで、予防に向けた意識には差がでてくると思います」と話す。

注意ポイントを事前に整理

 長野県にある佐久医療センターの小児科医、坂本昌彦さんは「非常時は慌てやすいため、普段からの備えが大事。いざというときに注意すべきポイントをあらかじめ整理しておくだけでも、冷静に対処できると思います」と言う。

 坂本さんは、日常的な子どもの病気や育児、事故予防などの情報を発信する「教えて!ドクタープロジェクト」の中心メンバー。情報はホームページ(https://oshiete-dr.net/別ウインドウで開きます)やスマートフォン向け無料アプリで公開している。

 小さい子どもがいる家庭では、災害で断水に備える時は浴槽に水をためずにペットボトルで保管することや、ベランダに踏み台になりそうな物を置かないことなど、普段から決めて実践しておく。余裕があれば、倒れても中身のお湯がこぼれにくいケトルなど、安全に配慮された製品に買い替えておいてもよいという。

 ボタン電池の誤飲は、落ちている状態の電池だけでなく、幼児自身がリモコンのフタを開けてから口に入れるケースも少なくないという。「リモコンのフタが開かないようにしたり、ボタン電池を使う器具が家のどこにあるのかを把握したりしておくことも有効かもしれません」

遊びを通じたシミュレーションも

 子どもの場合、災害時に状況を理解できずに落ち着かず、気持ちが不安定になりがちだ。小学生以上など、大人の説明を理解して納得できる場合には、事前に遊びを通じて非常時を疑似体験させて、災害時をシミュレーションすることで不安の軽減に役立つ方法があるという。

 例えば、平時に電気を消して過ごす「停電ごっこ」を通じて、部屋が暗い中で使う機材がどこにあるのかを把握して実践しておくと、いざ停電したときに「あの時と一緒だ」と子ども自身が考えられることで、冷静になれる。また、避難グッズの荷造りに子ども自身も関わることで、子どもたちが家の中のどこに保管しているのかを理解したり、何が入っているのかを覚えておいたりできる。大人だけで準備を進めずに、子どもと一緒に取り組むことは「事前準備の盲点とも言える」という。

 坂本さんは「発生時にできることは限られてくるので、その場での負担を少しでも減らせることを事前に考えておくことが大事です」と話す。滝沢卓