突き上げた歓喜の拳 韓国の次期大統領は選挙に「勝った」のか?
5年ぶりの韓国大統領選を制したのは、保守系の最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユンソクヨル)前検事総長(61)だった。
3月9日の投票日を前に、その尹氏の友人たちに会った。小学校時代の幼なじみは「今もそうだけれど、体が大きかった。自分のボディーガードをしてくれた」。大学時代の友人は「司法試験の浪人中も友人の結婚式や葬儀など、世話を焼くのに奔走していた。だから、8回も試験に落ちたのかもしれないね」と話した。
尹氏は司法試験に合格後、検事となった。韓国の検察は時に、組織の利益を守るために鉄の団結を見せる。そのトップに立った尹氏には、どこか「親分の気質」があるようだ。
尹氏の親分肌は党の内紛の収拾劇でも発揮された。昨年12月、30代後半の若き党代表、李俊錫(イジュンソク)氏が尹氏の側近らと対立し、共同常任選対委員長を辞任する騒ぎがあった。
収拾には約2週間かかったが、尹氏は水面下で李氏に働きかけ、電撃的に抱き合って和解を演出。そのまま尹氏は地方への出張に向かうため、李氏がハンドルを握る車の助手席に大きな体を沈め、その様子がメディアで報じられて話題となった。
選挙戦の終盤、尹氏は世論調査で支持率3位だった中道野党「国民の党」の安哲秀(アンチョルス)代表(60)と野党候補の一本化に成功する。その交渉でも、人柄が役に立ったようだ。
投票日を前に何度か行われた主な候補によるテレビ討論では、安氏が年金制度の問題などで、クイズのように尹氏を問い詰める場面が何度もあった。尹氏はそんな安氏を、最後は深夜の「缶ビール会談」で口説き落とし、一本化を果たした。
政治経験ゼロを補うカギは
ただ、人柄だけで大統領が務まるほど政治は甘くない。政治経験がゼロの元検事が国のトップとして、ゆりかごから墓場まで世の中のありとあらゆる課題に向き合い、国民の命と暮らしを守る責務を負うことになるのだ。
果たして、大丈夫なのか。保…