頼もしかった上司は拳銃を奪われ、殺された 事件を伝える使命と教訓

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岩田恵実 角詠之
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 その事件が起きたのは1992年2月14日未明のことだった。

 東京都清瀬市の旭が丘派出所(現在は交番)で、巡査長の大越晴美さん(当時42)が首と胸を切りつけられ亡くなった。拳銃はケースごと持ち去られた。使われた形跡はないが、いまも見つかっていない。

 警視庁は延べ約14万人を捜査に充てたが、未解決のまま、2007年に公訴時効が成立した。事件から今年で30年。被害者の部下として接して事件に接し、語り継いでいる人がいる。

 江東運転免許試験場免許課長の福林正明警視(54)。「叱る時は厳しく、褒める時は思い切り褒める、愛情深い人だった」と振り返る。

 事件が起きたのは福林さんが警視庁に入って10カ月後で、大越さんは初めての上司だった。事件の数時間前に交わした会話は忘れられない。

 自転車泥棒を摘発した福林さんを「たいしたものだ!」と褒めてくれた。大越さんは旭が丘派出所に応援に来ており、わざわざ電話をくれた。

 その翌朝、大越さんの遺体と対面した。

 どこか小さく感じられた。「…

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