ウクライナ危機1カ月、ロシアはなぜ侵攻? イラストで改めて解説

ウクライナ情勢

佐藤達弥、石橋亮介
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 ロシアがウクライナへの侵攻を始めて1カ月。国際社会からの非難や制裁にもかかわらず、ロシアの攻撃はやまない。停戦への糸口がつかめないまま、市民の犠牲は増え続けている。

 ウクライナとロシアの因縁は古い。現在の首都キエフに生まれたキエフ公国が10~12世紀に欧州の大国となり、同じ東スラブ民族からなるロシア、ウクライナ、ベラルーシの源流になった。20世紀に入り、ウクライナは旧ソ連の一部になったが、ソ連が崩壊した1991年に独立を宣言。その後、国内で親ロシア派と親欧米派が対立を続けてきた。

 ロシアはなぜ、言語や文化が近く「兄弟」ともたとえられるウクライナを攻撃したのか。

 「ロシア、そして国民を守るにはほかに方法がなかった」。2月24日、プーチン大統領が攻撃開始を宣言する演説で述べた。

 プーチン氏の主張はこうだ。

 《(親ロシア派組織が占拠する)ウクライナ東部で、ロシア系住民をウクライナ軍の攻撃から守り、ロシアに対する欧米の脅威に対抗するための正当防衛だ》

 西側諸国の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)が自分たちを敵とみなしてきた、というのがロシアの言い分。ウクライナは親欧米のゼレンスキー政権の下、そのNATO加盟を目指しているという筋書きだ。

 ロシアにはこれが我慢ならない。様々な理由をつけてゼレンスキー大統領を武力で排除し、ロシアに従順な国に変えたいと考えている。ウクライナを影響下に置けば、地理的にも、NATOの国々とロシアとの間のクッションになる。

「東方拡大しない、約束を破った」 文書に残っておらず

 また、プーチン氏は、ウクライナ人とロシア人は「歴史的に一体」と主張し、ウクライナを独立した存在と認めてこなかった。そうした独自の歴史観や国家観が侵攻の判断に影響した可能性も否定できない。

 ロシアはウクライナへの侵攻を、NATOの脅威に対する自衛措置だとも説明している。プーチン氏は2月24日の演説で「NATOはロシアを敵と見なしてウクライナを支援している。いつかロシアを攻撃する」と言い切っている。

 NATOは東西冷戦期の1949年、米英仏など西側陣営の12カ国が、旧ソ連や社会主義陣営に対抗するために結成した。防衛を最大の目的とし、加盟国への攻撃は同盟国全体への攻撃とみなして集団的自衛権を行使すると規定している。

 99年以降、ソ連の侵攻や支配を受けた経験があるポーランドや旧ソ連構成国のバルト諸国などが、ロシアから身を守るためとして次々にNATOに加盟。現在は30カ国にまで拡大している。2008年には、ウクライナやジョージアが将来的な加盟国と認められた。

 不信を募らせたロシアは「東方拡大しないという約束をNATOが破った」と主張し、ロシアへの直接的な脅威だとして対立姿勢を強めている。ただ、ロシア側が主張する「約束」は文書に残っておらず、欧米側は否定している。

 侵攻を続けるプーチン政権の財源を断とうと、米国や欧州は厳しい経済制裁を科し、ロシア産の原油や天然ガス、石炭などの輸入も減らそうとしている。ただ、資源大国のロシアから各国への供給が大きく減れば、世界的なエネルギー価格の上昇につながる。

 日本の輸入エネルギーに占めるロシア産は天然ガスで約8%、原油で約4%。世界全体の供給量に余裕がない中で輸入を制限すれば、日本経済にも相応の影響があるとみられる。

 資源の輸入以外でも影響は出ている。ロシア領空を通る空輸が難しくなったことから、日本では人気のノルウェー産サーモンの供給が不安定になっている。日本がロシアから輸入してきたカニやウニの品薄や値上がりのほか、ロシアとウクライナが世界に向けて輸出してきた小麦も世界的な値上がりが心配されている。(佐藤達弥、石橋亮介)