第20回窓から見えた装甲車、橋めざして逃げた「第3次大戦は始まっている」

有料会員記事ウクライナ情勢

石橋亮介、リビウ=高野裕介
[PR]

 ロシア軍によるウクライナへの侵攻が始まり、24日で1カ月。首都キエフを巡る攻防戦は激しさを増し、戦場と化した郊外の街からは、ロシア軍に追いやられるようにキエフ市中心部へと市民が避難を続けている。市内にとどまる人、そして離れる人。選択は違えど、祖国を守りたいという強い願いは共通している。

 キエフ中心部から北西に十数キロ。アパートが立ち並ぶ静かなベッドタウンのイルピンは4日、戦場と化した。

 「住宅地にまでロシア軍が攻めてくるとは、思わなかった」。エンジニアの仕事を引退し、妻と8歳の愛犬テリーと静かに暮らしていたビクトル・ブリリアントフさん(68)は21日、電話取材にそう語った。

 ロシア軍がウクライナへの侵攻を始めた2月24日、イルピンの北西に隣接するアントノフ国際空港で、激しい戦闘が始まった。

 間近に聞こえる砲撃や爆発の音。ロシア軍がキエフ制圧をめざしていることは明らかだった。

 妻は地方出張で家におらず、自宅にいたのは自分とテリーだけ。キエフ中心部に向かう幹線道路はイルピンを迂回(うかい)するように延びているため、「動く方が危険だ」と残ることに決めた。

ラジオで必死に情報集めた

 3月4日は朝から、銃撃や砲撃の音が街の中で響き始めた。6階の自宅の窓から通りをのぞくと、ロシア軍の8輪の装甲車が走り抜けるのが見えた。

 昼過ぎ、電気やガス、水道が断たれ、携帯電話やインターネットも遮断された。周辺のアパートに対する攻撃が始まり、数メートル離れた自宅の隣室の壁にも砲弾が直撃し、爆発した。それ以降、窓に近づくのもやめ、窓から離れた自宅奥の廊下に閉じこもった。

 「逃げるべきか、とどまるべきか。どちらが安全かわからなかった」

 アルコールストーブで紅茶を沸かし、残ったパンをかじりながら3日間とどまったが、暖房の切れたアパートは次第に寒さが厳しくなってきた。

 周囲にはもう、自分以外に誰も残っていなかった。

 7日の午前8時半ごろ、「こ…

この記事は有料会員記事です。残り2350文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【無料会員限定】スタンダードコース(月額1,980円)が3カ月間月額100円!詳しくはこちら

連載ウクライナ危機 市民は今(全120回)

この連載の一覧を見る