諫早湾堤防の開門「無力化」求めた差し戻し審、福岡高裁できょう判決
国営諫早湾干拓事業(長崎県)をめぐり、堤防排水門の開門を命じた確定判決を強制せず「無力化」するよう国が求めた訴訟の差し戻し審の判決が25日、福岡高裁で言い渡される。
諫早湾の堤防排水門をめぐっては、漁業者が起こした訴訟で開門を命じる同高裁判決が2010年12月に確定した。
一方で、反対する営農者などが起こした複数の訴訟でその後、開門を認めない判決が確定している。
今回の判決で、こうした司法判断のねじれが継続するのか、あるいは非開門の統一判断へと向かうのか、注目される。
差し戻し審で国側は、諫早湾周辺の漁獲量は増加傾向だとし、防災面での堤防の有益性も主張した。
開門を命じた判決の確定後に、別の訴訟で開門を認めない判決が複数確定しているなどの「新たな事情」が生じたとして、開門の強制は権利の乱用にあたると訴えている。
一方、開門を求める漁業者側は、国が示した漁獲量の統計で増えているのはごく一部で、大半の魚種で漁獲量は低迷したままだと主張。開門は権利の乱用にあたらない、などと反論していた。
「無力化」訴訟では、14年12月の一審・佐賀地裁判決は国側敗訴としたが、18年7月の二審・福岡高裁判決は一転、開門を命じる確定判決後に漁業者側の漁業権は更新されて「(更新前の漁業権に基づき)開門を請求する権利も消滅した」として国側勝訴とした。
これに対して19年9月の最高裁判決は、「漁業権の消滅」という理由だけで無力化することは認めず、審理を差し戻した。
差し戻し後の福岡高裁は昨年4月、開門の是非には触れずに和解協議の場を設けるよう双方に提案。漁業者側は賛同したが、国側は開門の余地を残した和解協議を拒否し、昨年12月に結審していた。(布田一樹)