ロシアによるウクライナ侵攻では、私たちにとっても身近となったSNSが情報の発信・流通に活発に利用され、戦争に少なからぬ影響を与えています。自分も知らず知らずのうちに情報戦の渦中にあるのではないか。とれる対策はあるのか――。そんな懸念について、東京海上ディーアールの川口貴久・主席研究員に聞きました。
――SNS時代の戦争の特徴を、どのように見ていますか。
今回のウクライナ侵攻では、市民やロシア軍の兵士ら様々な人のメッセージや写真がSNSに投稿にされていることが、非常に特徴的です。紛争の当事者以外でも、メディアや欧米の情報機関、公開情報の分析「オシント」の専門家や団体、商業衛星にアクセスできるシンクタンクなどが、様々な主張や事実を見極める「ファクトチェック」をし、多くのうそや偽情報を暴いています。
紛争の当事国以外の一般のSNS利用者では、単に気になった動画に「いいね」をつけ、メッセージを拡散しているだけだという人が大半でしょう。そうした人も含め、軍人ではない民間人が、意図せずとも情報戦の「兵器」と化している可能性があります。
SNS時代の戦争では、戦闘の領域として、陸、海、空、宇宙空間、サイバー空間の五つに加えて、第6の「認知空間」が重要であるとの見方が広がっています。海を押さえる制海権、空を押さえる制空権という言葉がありますが、人の脳を押さえる「制脳権」をめぐる認知領域の戦いが激化しています。
――「人の脳をおさえる」とは、具体的にはどのようなことでしょうか
衝撃的な情報を浴びせて冷静…
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- 【視点】
安全保障とサイバーリスクに関する若手の論客、川口貴久さんの指摘で、私たちが最も真剣に考え、受け止めなければならないのは、以下の点だと考えます。 紛争の当事国以外の一般のSNS利用者では、単に気になった動画に「いいね」をつけ、メッセー