大阪桐蔭の川原、夏の悔しさ晴らす完投 先発抜擢に応え、満面の笑み

高橋健人
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(24日、第94回選抜高等学校野球大会1回戦、鳴門1-3大阪桐蔭)

 最後の打者を見て、大阪桐蔭の川原嗣貴(しき)は笑った。

「良い形で締めくくれば、次につながる」

 帽子を落とすほど右腕を力強く振り、141キロの直球で空振り三振。バックを振り返り、満面の笑みでガッツポーズをした。

 188センチの長身を生かした角度のある投球が持ち味の背番号「10」。

 2年春からマウンドに上がっているが、新チーム結成後、エースナンバーを背負ったのは同級生右腕の別所孝亮だった。昨秋の公式戦では自身の調子が上がらず、2年生左腕の前田悠伍にも追い抜かれた。

 それでもこの日の朝、西谷浩一監督から「一番良い準備ができていた。『投げさせてくれ』という気持ちを感じた」と初戦の先発に抜擢(ばってき)された。

 「最後まで投げ、チームを勝たせる」

 覚悟は決まっていた。

 甲子園には苦い思い出がある。

 近江(滋賀)と戦った昨夏の甲子園の2回戦。4―4の八回に2番手でマウンドに上がったが2失点し、試合に敗れた。

 「抑えたいという気持ちが先走った。体を突っ込んでストライクが入らず、甘い球を打たれた」。試合後は人目をはばからず泣き崩れた。

 敗戦後、しばらくは何を考えてもマイナスな思考に陥った。だが、時間が経つ中で「チームの代表でマウンドに上がる投手がこのままではいけない」と切り替えた。

 迎えたこの日の選抜のマウンド。七回2死から3連打を浴びて1点を返されても、心を強く保った。「次の打者で確実に切ろう。そうすれば心強い味方の打線が点を返してくれる」

 9番打者を外の変化球で二ゴロに打ち取り、最少失点で切り抜けた。

 技術面でも成長を見せた。

 「小さな変化でバットの芯を外せる」と決め球にしているカットボール。冬にじっくりと時間を掛け、低いコースに決まるよう制球を磨いた。序盤に駆使し、次々と凡打に仕留めた。カットボールを狙われ始めたと感じた中盤以降は、カーブや直球をより多く織り交ぜ、的を絞らせなかった。

 108球を投げ、6安打1失点での完投勝利。昨夏の悔しさを晴らした。

 「勝利につなげられてよかった。この代は自分たちの学年なので、率先して引っ張っていきたい」(高橋健人)