吹奏楽部が待ち焦がれた甲子園 コロナ禍、やっと演奏できた「幸せ」

松永和彦 松尾慈子
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 第94回選抜高校野球大会第6日の24日、第1試合で鳴門(徳島)を3―1で破った大阪桐蔭のアルプス席で、吹奏楽部長の宮崎志歩さん(3年)はトロンボーンを思いっきり演奏した。待ちに待って、ようやくこの時が来た。

 宮崎さんの兄、仁斗さん(21)は2018年夏の選手権大会に大阪桐蔭の左翼手として出場した。決勝では本塁打を放ち、チームの優勝に貢献した。

 兄の活躍にも劣らず、アルプス席にいた宮崎さんの心をとらえたのが、応援の演奏だった。宮崎さんは当時、中学の吹奏楽部でトロンボーンを担当していた。全国コンクールの常連でもある大阪桐蔭の吹奏楽部はあこがれだった。

 「演奏が選手を勇気づけ、背中を押していると感じた。とても迫力があって、私もこの舞台で思い切り吹いてみたいと思った」

 だが、大阪桐蔭に入学する年の春の選抜大会は、野球部の出場が決まっていたが、新型コロナの影響で中止に。その夏の選手権大会も中止。昨年の春は、野球部は出場し、応援も認められたが感染防止のため生演奏はだめだった。

 昨年夏、野球部はまた甲子園に出場。今度は演奏も認められたが、初戦を前に吹奏楽部内に濃厚接触者が出たため、演奏は見合わせることに。「せっかくのチャンスで、野球部の選手もがんばって甲子園行きを手にしたのに、悔しかった」。2回戦以降、全国的な感染拡大により、演奏はまた不可になった。

 今大会、50人までの条件付きだがアルプス席に吹奏楽が帰ってきた。宮崎さんは「誰ひとり甲子園での演奏経験がなく、不安もあったし、ホールと違って反響が聞こえないので難しかったけれど、あこがれの甲子園で吹けて幸せです」と話した。(松永和彦、松尾慈子)

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