中国とにらみ合う第1列島線上 米軍が日の丸オスプレイと描く作戦

沖縄・本土復帰50年

藤原慎一
【動画】東富士演習場であった日米共同訓練=藤原慎一撮影
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 機体に日の丸を描いたオスプレイが、茶色い砂煙を吹き上げながら着陸した。走り出た自衛隊員が銃を構えて伏せ、敵の動きに目を光らせる。

 その直後、自衛隊が確保したスペースに降り立ったのは、米軍のオスプレイだった。武装した米兵はさらに一帯を制圧するため、周囲に茂る林の中へ入っていった。

 3月15日、富士山のふもとに広がる陸上自衛隊の東富士演習場(静岡県)。離島防衛の任務を担う陸自水陸機動団(長崎県佐世保市)と、沖縄に司令部を置く米海兵隊隷下の第31海兵遠征部隊(31MEU)の共同訓練が、報道公開された。

 訓練は、敵がいる離島に上陸後、日米が連携して武器で制圧し、拠点を築く動きを想定する。23日には、米海兵隊の最新ステルス戦闘機F35Bも参加。地上の陸自部隊から敵の位置情報を受け取ったF35Bが爆撃し、離島を制圧する訓練も行った。

 日米で約1千人が参加し、3月4日から約3週間にわたって続いた訓練のベースには、敵の射程内に拠点を設け、周囲の制海権を確保する米海兵隊の新たな作戦構想「EABO(遠征前進基地作戦)」がある。

視線の先に中国 「最前線」の沖縄 

 新構想が念頭に置くのは、米国が「唯一の競争相手」に位置づける中国だ。

 中国軍は九州から沖縄、台湾を結ぶ「第1列島線」の内側で近年、艦船や爆撃機の航行を活発化させている。防衛白書によれば、日本周辺に限ると中国の兵力はすでに米国を上回る。戦力面で劣勢に置かれつつあるなか、日米は、第1列島線上へのミサイル部隊や電子戦部隊の増強を図ることで牽制(けんせい)を強めている。

 加えて、東シナ海を隔てた中国との緊張の高まりに呼応するように、離島への上陸や制圧を想定した日米の訓練を繰り返している。その「最前線」が沖縄だ。

 2020年には、水機団が初めて沖縄で訓練を実施した。沖縄本島東海岸の米軍ブルービーチ訓練場(金武町)で、31MEUと水機団が海から島へ上陸する動きを確認した。

 今回の訓練も、こうした流れの延長線上にある。広大な東富士演習場は、上陸訓練にとどまらず、陸上戦闘や敵の制圧の動きまで確認することができ、陸自は「より実践的な訓練だ」と意義を強調する。

 さらに今回の訓練で、日米双方が高く評価するのは、自衛隊と海兵隊がそれぞれのオスプレイを使った点だ。陸自トップの吉田圭秀・陸上幕僚長は25日の記者会見で、「陸自と海兵隊のオスプレイの連携が強化され、同じ速度で迅速に機動展開できるようになった」と力を込めた。

 31MEUのナコニジィー司令官は訓練後の会見で、「米海兵隊を日本側の機体に乗せることも、その逆も可能になってくる」と、さらなる日米一体化に向けた手応えを語った。

 日米と中国はいま、沖縄に連なる第1列島線上で、互いの戦力を誇示しながらにらみ合いを強めている。(藤原慎一)

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