異常な地殻変動続く硫黄島 世界でも類を見ない隆起年1m、噴火も

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黒沢大陸
【動画】東京都心から1200km南の硫黄島で、世界でも類を見ない異常な地殻変動が続いている。=依知川和大撮影
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 東京都心から約1200キロ南に浮かぶ小笠原諸島硫黄島太平洋戦争の激戦地は、気象庁が全国に111指定する活火山の一つでもある。年に1メートルという世界でも類を見ないペースで地面が隆起し続けており、地熱が高く、小規模な噴火もしばしば起きる。地下で何が起きているのか。

 島の北部でひときわ目立つ直径120メートルほどの丸い穴。周辺からは噴気も上がっている。今年1月、朝日新聞社機「あすか」から視察した防災科学技術研究所の長井雅史・特別研究員は「昨年11月24日の噴火でできた火口です。これまで確認したなかで最も大きい」と話した。

 長井さんは長年、硫黄島を研究してきた。今回の空撮では、島の南部の沿岸で海水の変色も観察された。島の西部では、かつて海上に見えていた沈没船が海岸に打ち上げられたようになっており、島の隆起が進んでいる様子がうかがえた。

 硫黄島は、長さ約8・5キロ、幅4・5キロの細長いくさび状の形の島だ。南端には、硫黄島の戦いで米軍が星条旗を掲げた標高約170メートルの摺鉢(すりばち)山がある。上空からも、地殻変動を観測する電子基準点や慰霊碑があるのが確認できた。硫黄島では今なお遺骨収集が続く。当時の激しい戦闘を思い、犠牲者の冥福を祈った。

 島の中北部は標高約115メートルの元山を中心に台地が広がっており、現在は自衛隊の航空基地がある。そして、千鳥ケ原と呼ばれる低い台地で摺鉢山とつながっている。

 硫黄島は、海の下まで含めると富士山のような大きな火山だ。

 長井さんの地質調査によると、硫黄島は数十万から10万年前ごろ、大型の成層火山だった。山頂が海面上に姿を出した火山島だったかも知れない。それが、10万年前以降に大規模な噴火を起こした。地下にあったマグマが放出され、空洞となった部分が陥没して中央部に直径約10キロのカルデラができた。カルデラ内部には砂や泥が堆積(たいせき)した。

 約2700年前に再び大規模な噴火があり、水中で溶岩や火砕流が噴出。その後、800年前までにカルデラの外側で数回の噴火があり、摺鉢山ができた。

 島の隆起はこのころから始まったらしい。カルデラ形成後、地下にマグマがたまって地盤を押し上げる「再生ドーム」という現象で、隆起は現在も続く。海上に出た頂上が波で削られながら隆起したたため、平らな火山島になった。

 火山活動は現在も活発で、小規模の水蒸気爆発を繰り返し、島内は地面の温度が高く、多くの噴気地帯や噴気孔がある。マグマからは高温の火山ガスが出続けており、量が増えたり、地下に割れ目が生じたりすると水蒸気噴火が起きる。

 ガスの噴出や噴火は、再生ドームの周辺部にあたる海岸付近が多く、中央部には少ない。噴火を繰り返す「ミリオンダラーホール」や「阿蘇台陥没孔」と呼ばれる火口が島の西部にあり、島の北東部や北西部の海岸付近にも火口が集中している。

 地震も多く、体に感じない地震を含めると1日に100回を超えることもある。火山の観測では通常、地震計を地下100~200メートルに置いて地上の震動を避けるが、硫黄島は地下の温度が高く機器が壊れてしまうため、戦時中使われていた地下壕(ごう)に設置している。それでも、噴き出した硫黄が雨水で溶けて機器を劣化させるという。

 特徴的なのが、世界の火山のなかでも極めて速い隆起スピードだ。国土地理院の観測では、1年で1メートルほども隆起する。ペースは一定でなく、防災科研の観測では、島の北部は2003~06年に沈降していたが、隆起に転じ、11から12年にかけては2メートルを超えた。激しいのは島の中央部で、カルデラの外側にある摺鉢山はあまり隆起していない。

 気象庁が24時間態勢で監視…

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    東山正宜
    (朝日新聞デジタル機動報道部次長)
    2022年3月25日12時49分 投稿
    【解説】

    太平洋戦争の激戦地として知られる硫黄島は、現在、自衛隊の航空基地となっていますが、年間に1mもの速さで隆起しているんだそうです。 大型の成層火山がカルデラ噴火を起こして再び真ん中が盛り上がっていることや、キャプテンクックの船団が世界一