伝統の「種」を日本に 巨匠ムーティの至芸を聴く 東京・春・音楽祭

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編集委員・吉田純子
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 東京・上野を拠点とする「東京・春・音楽祭」が18日、始まった。開幕を告げるリッカルド・ムーティのタクトは、同音楽祭のみならず、コロナ禍を彷徨(さまよ)う音楽界全体への豊かな示唆に満ちたものだった。若手奏者たちでつくる「東京春祭オーケストラ」の19日の公演を聴いた(東京・錦糸町のすみだトリフォニーホール)。

「東京・春・音楽祭」は4月19日まで、東京・上野を中心に開催中。美術館や博物館での公演もある。https://www.tokyo-harusai.com/別ウインドウで開きます

 理屈ではなく、通して聴いて初めてその意味を「体感」できる、起伏に富んだプログラムだった。明朗なモーツァルトの交響曲第39番変ホ長調から、陰影に満ちたシューベルトの交響曲第8番ロ短調「未完成」へ。そして、祝祭感あふれるイタリア風序曲ハ長調で閉じられる。

 モーツァルトの第39番は、いわゆる後期3大交響曲のひとつだが、決して「晩年」の作ではない。有名なト短調交響曲(第40番)と「ジュピター」(第41番)が1788年、自身の斜陽への予感のなか、来たるロマン派の時代へと突き動かされるように書かれたのに対し、第39番はその2年前、名実ともに最盛期にあった86年の作品だ。この時、モーツァルト30歳。貴族社会の懐で、のびのびと天賦の才を謳歌(おうか)していた「神童」の残照を思わせる、朗らかな逸品である。

 あらゆる楽想が、重力から解…

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