弱気になりかけた金光大阪の古川 迷いなき粘投は中日OBの教え

高橋健人
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(25日、第94回選抜高等学校野球大会2回戦、木更津総合3-4金光大阪)

 延長十三回タイブレーク。押し出し四球で同点に追いつき、なおも2死満塁。金光大阪の3番古川温生(はるき)は2番福冨龍之介が打席に立っても、ネクストバッターズサークルには入らなかった。

 「このまま同点でも、投げてやる」

 十四回のマウンドに備え、三塁ベンチ前で捕手岸本紘一とキャッチボールをしていた。

 気持ちを高めていた。一方で、弱気の虫が少し顔を出してもいた。

 高校に入って13回を投げたのは初めて。160球を投じてきた疲労が確実に体にのしかかっていたからだ。

 「ここで決まったらいいな。終わってほしい」

 複雑な思いで、福冨の打席を見つめていた。

 春夏通じて甲子園初勝利を挙げた1回戦に続き、古川はこの日も快調だった。序盤から木更津総合(千葉)の好右腕、越井(こしい)颯一郎との投手戦を繰り広げた。

 170センチ、70キロの小柄な体から、140キロ台前半の直球や緩いカーブで果敢に厳しいコースを攻めた。

 あれこれ迷わずに思い切り腕を振れるのは、元プロ選手の教えが根底にある。

 OBであり、中日で活躍して、いまは母校のコーチを務める吉見一起さん(37)だ。登板する時の心の持ちようや、練習の取り組み方を教わってきた。

 特に印象に残っている言葉は「エースなんだから」。

 強豪チームを相手にすると気持ちを強く保てず、フワフワした状態になりがちな自分が徐々に変わるきっかけになった言葉だ。

 ピンチの場面で思い出すと、力が湧く。

 十三回。1死二、三塁で高めに浮いたスライダーを中前に運ばれた。重い2失点を喫した。

 それでも、「この2点で抑えて味方の逆転を待とう。後続は断ち切る」。続く2人をそれぞれ137キロの直球で凡打に仕留めた。すると裏の攻撃で、エースの頑張りに応えるようなシーンが訪れた。

 十四回に備えて投球練習をしていた古川の視界に入ってきたのが、福冨の押し出しサヨナラ死球だった。

 初戦に続き、2戦連続完投勝利。「自信を持って最後まで投げられてよかった」

 夢の舞台で殻を破った右腕が、さらに前へと突き進む。(高橋健人)