「映画文化をゼロから考え直させる」米教授のドライブ・マイ・カー評

有料記事ドライブ・マイ・カー

聞き手・佐藤美鈴
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 日本時間28日(現地時間27日)に発表される米アカデミー賞で日本作品初の作品賞など4部門にノミネートされた濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」。全米映画批評家協会賞など前哨戦とされる米国内の映画賞で次々受賞を重ね、日本作品で過去最多の4部門の候補作となった。米国で高く評価された理由、濱口作品の魅力について、映画の名門とされる南カリフォルニア大学映画芸術学部のリピット水田堯(あきら)教授に聞いた。

 ――作品、監督、脚色、国際長編映画と4部門にノミネートされたことを、どう受け止めていますか

 大変な出来事だと思います。「ドライブ・マイ・カー」以前の例では、メキシコで作られた映画として、アルフォンソ・キュアロン監督の「ROMA/ローマ」が2019年のアカデミー賞で外国映画の部門と作品、監督部門などで候補になった。ただ、彼の場合はメキシコ出身とはいえ長年アメリカで活躍してきた監督で、名前も作品も知られていたわけです。

 もう一つは、韓国出身のポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」。韓国メディアカルチャーという一つの枠組みの中で登場した作品で、韓国のポピュラーカルチャー、映画、テレビ、音楽などを含めて、すでにアメリカで話題になっている中で出てきた。配給会社がアメリカで大きなキャンペーンを続けていて、こういう動きを知っていた人たちの中では、ノミネートは驚きではなく、すでに期待されていたものでした。

 「ドライブ・マイ・カー」の場合は、特に映画批評家たちが高く評価し、ボストン、ニューヨーク、ロサンゼルスなど多くの場所で批評家協会による賞を受賞した。キャンペーンなどとは全く違う形で、実際に見た人たちの反応や評価でここまで運ばれてきたと思います。

 日本映画で監督賞の候補となったのは、すでに世界的に有名で評価されていた、黒澤明監督の「乱」以来。海外でも活躍する日本の映画監督といえば、是枝裕和黒沢清河瀬直美北野武が知られていますが、濱口監督がこの作品で一気にここまで知られる、評価されるというのはすごいこと。まさに作品の力、濱口監督の才能でここまできたのだと思います。

3・11後の日本、パンデミック後の世界

 ――ヨーロッパにとどまらず、より大衆的な作品が主流であるアメリカで広く受け入れられたのはなぜだと思いますか

記事の後半では、ドライブ・マイ・カーがこの時代に受け入れられた理由や、濱口監督が持つある「感覚」、そして受賞の可能性について聞きます。

 こちらの表現で最近「スロー…

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