第1回乳がん再発した54歳・未婚・独り暮らし 既に死んでいると言われて
ぞれぞれの最終楽章・おひとりさまとして(1)
フリーテレビディレクター 中村有里さん
「あなたは去年の夏には死んでいて、今は死後の世界を生きているようなものです」
最近通い始めたクリニックの医師に、そう言われた。一瞬、青ざめた。私はもう死ぬんだと思った。しかし死後の世界にいるのだったら、もうこれ以上は死ねない。だって、「お前はすでに死んでいる」のだから。それは漫画『北斗の拳』のケンシロウのせりふ。話のタネになると心の中でニヤリとしたら、落ち込まずに済んだ。私はもう蘇(よみがえ)ることしかできない。いつのまにか、生きる希望が芽生えていた。
とはいえ、私は「再発乳がん患者」だ。しかも普通に考えると、かなり末期的な状態にあるらしい。
54歳、未婚の独り暮らし…