働く人の3割、「勤務日にランチ抜き」の経験 食品値上げでさらに…
働く人の3割が、勤務日にランチを抜いた経験がある――。ある調査で、こんな実態が明らかになった。その主な理由が、節約。食材の値上げが相次ぎ、今後はお財布事情がますます厳しくなることも予想される。
コロナ禍で、同僚と連れだってランチに出かけることもままならなくなり、ランチの意義を感じられなくなっていることも背景にありそうだ。
調査は、福利厚生の食事補助サービスを提供する「エデンレッドジャパン」(東京)が、昨年12月、全国の20~50代の働く男女600人を対象に実施した。
勤務日にランチを食べなかったことがある人は、29.5%。そのうち、56.5%は「週に1回以下」、28.2%は「週に2~3回」で、残りの15.3%は週に4日以上、ランチを食べていないと回答した。
理由としてあがったのが、節約だ。
「金額を理由に、勤務日にランチの食べたいメニューを我慢したことがある」と答えたのが約6割。また、約3割が「食事代の節約のため」と回答した。
最も悲惨だったランチを尋ねたところ、「めんたいこだけ」「水とお菓子」などがあがった。
追い打ちをかける要因もある。
昨年以降、輸入に頼ってきた原材料費が上がり、食品も相次いで値上げされた。今年に入ってからは、大手各社がしょうゆや冷凍食品、ハム・ソーセージなど、身近な食品の値上げを相次いで発表。価格を引き上げる飲食店も増えている。
調査では、約4割が「飲食店のメニュー引き上げの影響を受けている」と回答した。
同社の広報担当者は「食材費の高騰が家計を圧迫し、節約としてランチをとらない動きが広がっている可能性がある」としている。
700円の弁当を我慢、おにぎり1個に
横浜市内の雑貨店で働く30代の女性も、そんな一人だ。
お昼時、近くのコンビニエンスストアに向かった女性は、棚に並ぶ弁当をざっと見渡し、白米とから揚げが入った700円ほどの弁当に手を伸ばしかけて、止めた。
「節約して貯金しないと。ランチくらい少し食べなくても耐えられる」とふと思ったからだ。
女性は結局、弁当コーナーの横にあったおにぎり1個で済ませることにした。一番安い「梅」1個100円を選んだ。
女性は普段から、食費を節約するため、前日の夕飯を入れたお弁当を自宅から持ってくる。月に5日ほど、忙しかったり、夕飯が残らなかったりした日は、ランチを抜いたり、おにぎり1個で我慢したりすることがある。
特に給料日前は貯金が少なく、何も食べないことも多いという。
4年ほど前から将来のことを考えて節約を始め、同居するパートナーと2人分の弁当をつくるようになった。食費は2人で月5万円ほどに収まるようにしている。
ただ、食費を削って貯金を心がける一方で、特に何かしたいことがあるわけではない。あるのは漠然とした不安だ。
2019年、金融庁審議会が「老後の生活費として2千万円の蓄えが必要」と資産形成を呼びかける報告書を出し、波紋を呼んだ。そのことが、節約のきっかけの一つだった。その額がたまるまでは、節約を続けるつもりだ。
「生活がギリギリってことはないですが、将来に備えないと。食材の価格も上がっていて、食費って一番先に削る対象。健康的ではないと思いますが……」と女性は漏らす。
消去法的にランチを抜く結果に
近畿大学の有路昌彦教授(食料経済学)は、ランチをとらない背景として「食材の価格が上がり、予算の制約が大きくなる一方、ランチを食べることで得られる効用が、自らの予算の状況に見合わなくなっている」と指摘する。
食事には、誰かと食べることで幸福を感じる社会的欲求や食欲を満たす効果があるが、コロナ禍で、会社では「1人で食べる」ことが推奨されている。同居家族がいる人にとっては、家族と食べる夕飯と比べて、1人で食べるランチは社会的欲求の満たされ方が低くなりがちだ。
また、事務職などの場合は体を動かさないため、空腹感が少なく、食欲も生まれにくい傾向にあるという。
「生命維持に影響がない範囲で、消去法的にランチや朝食を抜くことにつながっている」と有路教授は話す。
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データの解釈に一部誤りがあり、見出しと本文を修正しました。(片田貴也)
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