市川市長選 現職下した田中氏、ポスターには「悪いことはしません」

大嶋辰男、三嶋伸一、伊藤繭莉 佐々木健
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 任期満了に伴う千葉県市川市長選は27日即日開票され、無所属新顔で元衆院議員の田中甲氏(65)が現職の村越祐民氏(48)の再選を阻み、初当選を決めた。当日有権者数は40万508人、投票率は38・75%(2017年30・76%、18年再選挙33・97%)だった。

 選挙戦は、市長室へのシャワー室や高額家具類の設置、市長公用車として米テスラ社の高級電気自動車の導入など、村越市政の評価が争点の一つだった。

 前回に続く2度目の挑戦だった田中氏は、落選後から今回に向けて準備を進めてきた。選挙では「税金の使われ方を厳しくチェックし、情報公開の徹底で信頼される市川市を取り戻す」と訴え、市長給与の3割削減や退職金ゼロなどを掲げた。ポスターには「悪いことはしません」とのメッセージもつけた。

 自民党の国会議員や県議、市議らの応援を得て支持を広げ、前回の再選挙で約3千票差で敗れた村越氏を大きく上回った。

 当選を決めた27日深夜、集まった支持者らを前に「市民から見ると(村越氏の)税金の使い方や発言、行動が受け入れられなかった4年間だと思う。そのようなことが無いように市民と向き合った市政を作っていきたい」と語った。

 村越氏は3番手にとどまった。待機児童ゼロや困窮家庭への市独自の給付金など4年間での施策の実行力を示したが、市政運営への批判を乗り越えることができなかった。

 27日夜、市内で会見し「大変厳しい結果。すべて候補者の不徳となすところ。真摯(しんし)に受け止める」と述べた。敗因については「様々ご指摘頂いたところを有権者が極めて深刻に捉えていたということだと思う。説明が尽くせなかったところ、後手に回ってしまったところがあったので、もう少し謙虚に早く臨んでも良かった」と語った。

 同市長選では過去最多の計6人が争った。次点だった前県議の守屋貴子氏(54)は労働団体などの支援を受けたが、立候補の出足の遅れを取り戻せなかった。落選を受け、選挙事務所で「ひとえに私の努力不足」と選挙戦を振り返った。(大嶋辰男、三嶋伸一、伊藤繭莉)

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 シャワー室設置などで議論をよんだ村越市長。「現職首長の2期目の選挙は強い」とも言われるが、再選に遠く及ばなかった。

 市長選で市民の声を聞くと、市政を評価する声も多かった。待機児童ゼロや困窮家庭への市独自の給付金、同性異性を問わず市がカップルとその家族を「結婚・家族に相当する関係」と認める「パートナーシップ・ファミリーシップ届出制度」の導入など、施策の実行や判断の速さは、進め方に一部批判はあるものの「これまでの市川市政にはなかった」と言う人もいた。

 ただ、市長選で問われたのは、結果を見るかぎり政策よりも政治姿勢だ。

 市議会では、シャワー室設置などの市議からの追及の多くを市幹部が答弁し、決定者の村越市長が直接語ることは少なかった。「自らの説明責任を回避し続けた」とみた有権者は多かったのではないか。今回の市長選は「市民のチェックが働いた」とも言える。

 市川市は、財源が豊かで国からの普通交付税を受け取らない「不交付団体」だ。県内では2021年度市川、成田、市原、浦安、袖ケ浦の5市だけで、国からの制約がない分、千葉市船橋市などの「交付団体」よりお金の使い道の自由度が高い。

 今後、田中氏の公約実現に向けた22年度予算編成が始まるが、市長選で政治姿勢が問われたことを忘れてはいけない。他市以上に自由度が高い分、市長の説明責任は一層重い。(佐々木健)