介護保険料が京都府一高い町、「茶源郷」の厳しい現実と生き残り策は

河原田慎一
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 山肌に沿って、濃緑の茶畑が美しい縞(しま)模様を描きながら広がる。

 宇治茶の産地、京都府和束町。

 「茶源郷(ちゃげんきょう)」と呼ばれる絶景だ。

 茶農家は減りつつある。小規模な個人経営では収益が上がらないためだ。

 先代まで茶を栽培していたが、今は人に頼んで茶畑を維持しているという農家の男性(69)は、田んぼに肥料をまく手を止めて、つぶやいた。

 「あと10年は働くしかない。病気をしたらしまい(終わり)」

 年金から引かれる介護保険料が高く、国民年金だけの人は暮らせないという。

 町の人口は減り続け、高齢化率は47・6%。

 65歳以上が納める介護保険料の基準月額は7600円で、府内の市町村で最も高い。

 介護保険の運営は市町村単位。必要な介護サービスが増える一方、支える世代の人口が少ない自治体では、1人あたりの保険料負担が大きくなるからだ。

 町は「必要な人が必要な時に、必要なサービスを」をモットーに、小さな自治体ならではの「目配りの利いた」高齢者支援策に取り組んでいる。

 だが、介護保険の運営は厳しい。

 町は隣の笠置町南山城村との3町村で地域福祉計画を策定し、広域での連携を進める。介護サービスをする事業者は近隣市町村や奈良県からもやってくる。

 ただ、移動時間や燃料代は介護サービスに含まれないため、民間の事業者は採算が合わず、町が誘致しても新規参入はほとんどない。

 和束町のような過疎の町では、介護が必要になってもサービスを選択する幅が限られるのが現状だ。

 町の担当者は「ガソリン代が上がっても来てくれる事業者がいて、大変助かっている。今後、広域でも運営していけるような支援制度を、府レベルで考えてほしい」と話す。

 それでも、堀忠雄町長(76)は「介護保険料が高いことだけで評価してほしくない。財政負担は大きいが、居宅サービスは滞らせないし、高齢者が安心して町内に住み続けられるようにする」と言い切る。

 「農村の自然の中で、在宅介護も子育ても無理なくできるのが、この地域の特色。若い世代向けと介護の施策は表裏一体だ」

 保険料を支える若い世代が住みやすい町になれば、保険料が抑えられ、介護サービスの充実にもつながる。

 だが将来的な見通しは明るくない。

 介護保険制度を守るために町が力を入れるのが、認知症や介護サービスが必要な状況になるのを遅らせる「予防」の取り組みだ。

 農産物などを売る直売所の一角で、80代の女性4人が編み物を楽しんでいた。

 「木曜日は手芸サークル、月2回は『シニア塾』で習字。80歳で茶畑の仕事を『卒業』しても、忙しいわ」と梶本礼子さん(83)。

 畑マツエさん(82)は「年金は下がっているのに介護保険料(の負担)は大きい。でもお金は介護が必要な人に回したらええし、(作品が)できたら楽しいということは、まだぼけてへんのかな」と笑った。

 農作物だけでなく、作った巾着袋などの手芸作品も直売所で販売される。

 堀町長は「高齢者が楽しんで生きがいを持つことが、介護や認知症の予防策と一体になっている」と話す。

 府も、高齢者のサークルが、介護・認知症の予防の取り組みを広めるきっかけになると注目している。予防できれば、将来的な財政負担を減らすことにもつながる。

 認知症や介護が必要になるタイミングを少しでも遅くするため、府は、高齢者の集まるサークルなどを訪問して口内の健康管理、栄養の取り方などについて指導できる医療・福祉関係者を養成中だ。

 高齢者支援課の担当者は「市町村ごとの介護保険料の差をなくすことが目的とは考えていない。介護・認知症予防のための人材育成のほか、訪問から宿泊まで対応できる小規模でも多機能な施設を整備して、府内のどこでも、より長く在宅でいられるサービスを組み立てられるようにしたい」と話す。

 府によると、府内の認知症患者数(推計)は2020年に13・2万人、30年に17・9万人。65歳以上の推計人口に占める割合は20年の17・4%から30年に23・4%になる見通しだ。(河原田慎一)