日大・田中前理事長に懲役1年執行猶予3年 脱税事件で東京地裁判決

原田悠自
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 取引業者からのリベートなど約1億2千万円の収入を申告せず約5千万円を脱税したとして、所得税法違反の罪に問われた日本大学前理事長・田中英寿被告(75)に対する判決公判が29日午後、東京地裁であった。野原俊郎裁判長は懲役1年執行猶予3年、罰金1300万円(求刑・懲役1年、罰金1600万円)を言い渡した。

 起訴状によると、田中前理事長は2018年に1千万円、20年に1億820万円の計1億1820万円の収入を税務申告せず、計約5200万円の所得税を免れたとされる。

 公判で検察側は、田中前理事長や妻が、側近の日大元理事・井ノ口忠男被告(64)=背任罪で起訴=を介して大学の取引業者からリベートを受け取るようになったと説明した。特に医療法人「錦秀会(きんしゅうかい)」(大阪市)前理事長・籔本雅巳被告(61)=同=からは、背任事件の舞台となった大学病院関連の取引の「謝礼」を含め、起訴内容の6割強を占める計7500万円を受領したと指摘した。

「争う気ありません」 具体的な説明せず

 田中前理事長は「争う気はありません」と起訴内容を認めたが、取引業者との関係や受領金の趣旨について具体的に説明することはなかった。

 検察側は論告で、田中前理事長が15年にも申告漏れを指摘されて修正申告していた経緯に触れ、「納税意識の欠如は顕著だ」と指摘した。「我が国で有数規模の学校法人理事長の立場を利用した犯行で社会的非難は強い」とも批判した。

 弁護側は最終弁論で、井ノ口被告らによる背任事件は「知り得なかった」とし、「不正利得の一部を受け取っている認識は全くなかった」などとして執行猶予付きの判決を求めた。

 背任事件では、日大板橋病院を舞台に、建て替え工事の設計業者選定と医療機器の調達で日大に計約4億2千万円の損害を与えたとして、井ノ口、籔本両被告らが起訴された。両被告の初公判は未定。(原田悠自)

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    増谷文生
    (朝日新聞論説委員=教育)
    2022年3月29日16時30分 投稿
    【視点】

     取引業者とどのような関係だったのか、どうやってお金を受け取ったのか、どこまで知っていたのか。そうした具体的な説明をしないままで退場するというのは、あまりに無責任です。日本を代表する大学の法人のトップを務めた者として、これからでも遅くはあり