近江・山田の連投 もう一度問う、ここまで1人に負担かけてよいのか

編集委員・安藤嘉浩
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 「シーズン初めに、ここまで1人の投手に負担をかけていいものだろうか」

 完投が目立った今大会の1回戦全16試合が終わった日、そう書いた。

 長崎日大との延長13回を165球で投げきった近江の山田陽翔(はると)の起用への懸念が念頭にあった。

 山田はその後も先発起用され、2回戦を87球で、準々決勝を127球で完投した。

 そして、この日もまた延長11回を170球で完投した。しかも、死球で痛めた左足をかばいながら、だ。

 「このまま投げさせていいのか。ぼくが決断しなければいけないという気持ちはあった」

 近江の多賀章仁監督(62)は葛藤があったことを明かした。死球のあと山田に尋ねたら、「行かせてください」と返ってきたのだという。

 「ベンチで涙が止まらなかった。すごい男やと思いました。気迫の投球でした」

 痛みに耐えてのプレーや1人で連投するエースを、かつては我々も美談として報じることはあった。前回も書いたが、そこは反省しなければいけない。

 日本高校野球連盟が投手の障害予防に取り組んで約30年になる。

 「高校球児は疲れていても、痛みがあっても、投げたいというもの。それを止められるのは指導者しかいない」

 そう警鐘をならし、複数投手の育成は定着してきた。

 対戦相手の浦和学院の投手起用は対照的だった。

 1回戦を完封し、2回戦、準々決勝でも先発したエース左腕の宮城誇南(こなん)をこの日、登板させず、今大会初登板を含む3投手の継投で臨んだ。

 森大(だい)監督(31)は「今日は宮城を投げさせないと決めていた。選抜が5試合ある中で4連投はさせないと決めていた」と語った。

 均衡した展開で延長戦にもつれたが、宮城がブルペンで本格的な投球練習をすることもなかった。

 同じく準決勝に進んだ国学院久我山は3投手、大阪桐蔭もここまで4投手を起用してきた。

 山田は故障明けだ。近江が4強入りした昨夏の全国選手権大会で右ひじを痛め、昨秋は登板出来なかった。それでも近畿大会でベスト8に入り、今大会の補欠校に選ばれていた。

 なぜほかの投手を投げさせないのか。試合後の会見での多賀監督の説明は「他の投手が山田の域にまだ達していない。冬の練習の成果が出て、他の投手が伸びるのはまだこれから」というものだった。

 2020年春に導入された「1週間に500球以内」の投球数制限にカウントされるのは、山田が25日の2回戦以降で投じた384球だ。31日の決勝に登板したとしても、投げられるのは116球までとなる。

 ただ投球数制限の導入の目的はあくまでけがの予防であって、制限以内なら投げてもいいという趣旨ではない。

 もう一度、言っておきたい。

 「シーズン初めに、ここまで1人の投手に負担をかけていいものだろうか」(編集委員・安藤嘉浩