誰もがサッカーで成長を F・マリノスが知的・障害児向け年間教室
【神奈川】サッカーJ1の横浜F・マリノスは4月7日から、知的・発達障害のある小学生を対象としたサッカースクール「にじいろくらす」を横浜市港北区で始める。知的・発達障害がある子ども向けに単発のサッカー教室やイベントを開いたことはあるが、年間を通じたスクール開催は初めて。障害者スポーツ、サッカーのさらなる普及・発展をめざす。
クラブは2020年11月、地域での普及や選手の育成活動などを行う部門を分社化し、一般社団法人「F・マリノススポーツクラブ」を設立。「あらゆる人に、スポーツを」などの理念を掲げて地域での社会貢献活動を進めている。
にじいろくらすは、F・マリノススポーツクラブが「マリノスサッカースクール新吉田校」の一つのクラスとして始める。個別支援学級(特別支援学級)や特別支援学校に在籍するなどの小学3~6年生を対象に週1回木曜日の午後4時半から1時間、年38回開く。入会金は1万1千円(税込み)、月会費は8350円(同)。定員は12人で、まずは参加を希望した男子8人でスタートする予定だ。
クラブは以前から障害者へのサッカー普及を進めてきた。04年に障害者の社会参加なども促進しようと、中学生以上対象の知的障害者チーム「フトゥーロ」を設立した。現在80人が在籍し、最年長は50代。横浜市社会人リーグ3部で戦う。
ただ、F・マリノススポーツクラブのスポーツ事業本部スクール・ふれあいグループコーチの斎藤幸宏さん(38)は「小学生へのアプローチができていない課題があった」と話す。
そこで昨年7月~今年1月に、知的・発達障害がある小学1~6年生を対象とした単発のサッカー教室「ふぁんタイム」を市内などで11回開催。斎藤さんは「参加者から運動する場がない、子どもが特徴を持っていることを理解してくれる指導者が少ないという声を多く聞き、我々が運動する場を設けることが必要と考えた」と説明する。
ふぁんタイムでは斎藤さんも含めて中学生以上のフトゥーロに関わるスタッフが指導したが、小学生への指導の難しさを痛感したという。斎藤さんは「サッカーは一斉指導が基本だが、一斉指導を受けられない子どもたちもいる」といい、指導が伝わらない部分もあった。「ふぁんタイムの初回は42人が参加したが、42人いたら42通りの特徴がある」と、子どもたちそれぞれの特徴をつかむ大切さも知ったという。ふぁんタイムは、後に一人ひとりに目が届くよう参加人数を絞り、指導時間も集中が持続するよう90分から45分に変更するなど工夫した。
ここで得た経験をにじいろくらすに生かす。斎藤さんは「こういった練習をしますよと事前に伝えて安心させる。耳だけでなく目からの情報も大切で、絵で説明する視覚支援のカードも用意する。わかりやすい言葉も心がける」と指導方法の例をあげる。
にじいろくらすの名称には「多色で表現される虹色のように、それぞれ違った個性を大切にし、仲間とともに成長してほしい」という思いが込められ、「人間教育」も重点に置く。
斎藤さんは「ほかの子どもたちと一緒にプレーする自信がついたとか、一般のスクールに移ってみようかなとか、感じてくれるようになり、違った仲間たちとサッカーができるようになってくれれば。にじいろくらすが自信を持つきっかけ、社会に関わる入り口になってくれたらうれしい」と話す。入会などの問い合わせはマリノスサッカースクール北エリア事務局(045・544・0100)へ。(上嶋紀雄)
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