最終講義「答えはない」 それでも連帯は存在する 藤原帰一さん

有料会員記事ウクライナ情勢

聞き手 編集委員・塩倉裕
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藤原帰一さん|国際政治学者

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まって1カ月余り。殺傷と破壊が終わる道筋は、いまだに見えない。この危機をどうとらえればいいのか。悲惨な戦争の歴史を踏まえて構築されてきた国際秩序は本当に崩壊してしまったのか。11年前から本紙夕刊コラム「時事小言」を毎月連載している国際政治学者の藤原帰一さんに聞いた。

 1956年生まれ。戦争と平和の考察で知られる。今年3月で東京大学定年退職した。著書に「戦争を記憶する」「平和のリアリズム」など。

 ――ロシアによるウクライナ侵攻開始の1週間後、映画ファンとして知られる藤原さんが「気持ちを取り直すために映画を見ようとしても、それができない」とSNSに投稿したのを見ました。

 「戦争を防ぐことはできなかったのか、という思いで心がいっぱいでした。どの段階でどのような国際手段を採れば戦争勃発を防げたのか……。あれこれ考えて止まらなくなっていました」

 「『屈辱からの解放』にこだわり『栄光を取り戻そう』と訴える観念的なリーダーはどの国にもいましたが、それで本当に戦争を始めてしまうとは……。真っ逆さまに崖から飛び降りるような自滅的な戦争をプーチン大統領は始め、多くの人々を殺した。その無責任さへの怒りで、自分の感情を抑えられなくなってもいました。衝撃だったのは、プーチン氏が戦争に勝てると考えたことです。自身の持つ力と戦争の効果を彼は過信した。リアリティーのない戦争が行われてしまいました」

 ――ウクライナでの戦争は、どういう性格を持つ戦争でしょう。

 「プーチン政権による明確な侵略戦争です。個別的自衛権の行使として主張することは不可能です。加えて一般市民や文民施設にも大規模な攻撃が行われている。まぎれもない戦争犯罪です」

 「ロシア軍の先制攻撃が失敗に終わったことも、戦争の性格を変えました。失敗したあとにできるのは、相手の被害規模を拡大することしかないからです。大量虐殺が起きているのはその帰結です」

「本当に戦争を始めてしまうとは…」。ロシアが始めた戦争をどう止めるのか答えがなく、国際政治学者としての無念がにじみます。後半では、核戦争にエスカレートする可能性や、国際協調主義の揺らぎ、日本に欠けている戦争のリアリティーへと議論を展開します。

■「国際政治学者に答えはない…

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    副島英樹
    (朝日新聞編集委員=核問題、国際関係)
    2022年4月2日11時52分 投稿
    【視点】

    「『侵略している相手にひるんでよいのか』という問題に直面しつつも『ひるまなければ戦争がエスカレートしてしまう』という問題もあって、解がない状態なのです」という指摘は極めて重要だと思います。21世紀に核保有国が絡んだ戦争が起きてしまった場合、

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    藤田直央
    (朝日新聞編集委員=政治、外交、憲法)
    2022年4月2日10時2分 投稿
    【視点】

    ウクライナ危機が国際秩序の危機に発展しかねない現実に直面し、「国際政治学者に答えはない」が考え続けねばならないという、藤原さんの真摯な姿勢を感じました。世界戦争へのエスカレーションを防ぐために、まずはロシア軍による侵略行為の停止。そこから国