第6回「経済力こそ武器」 経済安保、企業活動優先に 鈴木一人・東大教授

有料記事

聞き手・若井琢水
[PR]

 経済安全保障法案の課題や日本経済への影響について、専門家はどうみているのか。安全保障や経済制裁などに詳しい鈴木一人・東京大大学院教授(国際政治経済学)に聞きました。

規制の線引きは?

 ――経済安全保障で特に何が重要と考えますか。

 本丸は「サプライチェーン(供給網)の強化」だ。法案の4本柱の一つで、重要物資の供給が途絶えるのを防ぐため、中国への依存度を減らすねらいがある。ただ、どこまでが重要物資かの「線引き」が問題だ。

 他の国で作れないものか、レアアースのように中国依存が強いか、この二つの基準で判断すべきだと思う。経済安保で重要なものとして、コロナ禍で不足したマスクを挙げた与党議員もいるが、マスクは他の国でも作れる。一時的に需給バランスが崩れただけで、国産化を維持するのはコスト面で無理がある。

 ――4本柱には他に「基幹インフラの事前審査」「特許非公開」「先端技術の官民協力」があります。

 政府にはトータルの戦略がないようにみえる。特許非公開は軍事的な技術の流出防止、官民技術協力は軍事技術の開発にそれぞれ主眼がおかれている。経済安保と全く無関係ではないが、どちらも経済を守ることとは意味合いが異なる。これからは軍事面だけでは安全保障を確保できないから、範囲を広げた印象だ。

 ――経済界は、政府の企業への関与が強まるのではないかと懸念しています。

 サプライチェーンの強化や基幹インフラでは企業に計画を出させる。政府はこれまで行政指導などで業界の方向性をつけてきた。法案はさらに踏み込んでいて、企業への負担が大きくなる。そのバランスを取ることが大事だ。

規制に効果はある?

 特許非公開もAI(人工知能

この記事は有料記事です。残り573文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

連載経済安保法案を読み解く(全22回)

この連載の一覧を見る