だしブームの火付け役、福岡発祥の茅乃舎 安売りしないブランド戦略

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大鹿靖明
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■創業130年の「ベンチャー」(上)

 「茅乃舎(かやのや)だし」は、だしブームの火付け役として知られる。焼きアゴ(トビウオ)、かつお節、真昆布などが入ったパックは化学調味料や保存料は無添加で、煮出すだけで簡単にだしがとれる。

 東京・渋谷のIT企業に勤める30代の女性は、お土産でもらって使って以来、愛用している。「味と香りに感激しました。顆粒(かりゅう)だしより味が本格的です。かれこれ7、8年使っています」。手軽においしく作れるとあって、働く女性が人気を支えている。

 福岡発祥の茅乃舎はかつては「知る人ぞ知る」存在だった。2010年に東京・六本木ミッドタウンに出店後、次第に全国的な知名度を得るようになった。いまや東京、大阪、福岡を中心に直営店は31店。高級ブランドのように直営店と通信販売が主で、スーパーなどで安売りはしない。高級感を演出しており、当然、値段は張る。

 生みの親は、福岡県久山町の総合食品メーカー久原(くばら)本家グループを率いる河辺哲司(66)。家業の醬油(しょうゆ)屋の4代目である。

 久原の前身は、旧久原村の初代村長だった曽祖父の東介が1893(明治26)年に創業した久原醬油。2代目の祖父鉄太郎が朝鮮半島や旧満州中国東北部)に販路を広げたものの、敗戦によって失った。父龍二が3代目を継いだが、高度成長とともに洋食化が進み需要は減少。福岡大を卒業した哲司が1978年に入社したころは、従業員6人、売上高は6300万円の小さな醬油屋だった。

だしブームを生んだ明治創業の久原本家グループ。その軌跡を3回で追います。

 哲司は「どう考えても未来は…

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