「更生や振興に」 栃木の農家がブドウの木180本を少年院に提供

福田祥史
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 ワインの自家醸造復活を目指す茨城県牛久市の「牛久シャトー」と連携してブドウ栽培を始めた同市内の少年院「茨城農芸学院」に、栃木県塩谷町の栽培農家からブドウの木180本が提供された。学院の取り組みを新聞記事で知って共感した農家が申し出た。

 塩谷町船生の西畑高敏さん(71)。町職員だったがワインが好きで58歳のときに早期退職し、休耕田を借りて本格的にブドウ栽培を始めた。ほぼ独学で病気や害虫も克服しながら、5年目の2013年に、近隣の酒造会社の醸造でワインの商品化にこぎ着けた。町の特産品にしたいとの思いもあったという。

 現在は町内の約1・7ヘクタールで、赤ワイン用のメルロー種を中心に、白ワイン用のナイアガラ種や生食用の数種を育てている。今回、約1200本あったメルロー種の一部を提供した。3月14日午前に学院内の農場に運ばれ、建ったばかりのブドウ棚のハウスに2日がかりで植えられた。

 きっかけは20年8月の朝日新聞地域面の記事だった。日本最初の本格的なワイン醸造場として知られる牛久シャトーでの醸造再開に向け、牛久市の根本洋治市長が茨城農芸学院に原材料となるブドウ作りを持ちかけて協業が始まったと報じていた。

 記事には「若者を技術者として育て、就職の後押しをする狙いもある」「(天候や病害の)悪条件の中でも懸命に栽培を続けている」とあった。それを読んですぐ、西畑さんは「お役に立てるなら」と市役所に電話。学院側は栽培方法の検討や関連する予算措置など、1年半をかけて受け入れ準備をしてきた。

 「当時、日本にも小さなワイナリーがいくつもできてきて、ブドウの苗木が不足しているのを知っていたので、少しでもあげられればと思った」と西畑さん。

 学院のブドウ作りは20年度に3品種50本の試験栽培から始めた。こちらも手探りだったが、牛久シャトーの技術者から指導を受けるなどして、21年度には約35キロのブドウを収穫した。栽培方法もハウスが最善とわかり、新年度は西畑さんからの分も含めて約400本で本格栽培をする。露地栽培と合わせ100キロ程度の収穫を見込む。

 三好清凡(きよちか)学院長は「ブドウが育ってワインが地域の特産品になってくれると、少年たちも自分のした作業が社会のためになっていると感じるはずで、将来の目標ができる」と期待する。

 今回移植されたのはどれも、西畑さんがブドウ作りを始めた頃から10年以上育て、塩谷町の産品作りを担ってきた木だ。「一緒にやってきた木が、新しい場所に根付いて少年たちの更生や地域振興の役に立てるなら、こんなにうれしいことはない。栃木と茨城の交流にもつながってほしい」。西畑さんはそう願う。(福田祥史)