無戸籍者はいないのと同じですか 硬直した制度に潜む差別の意識

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聞き手・田中聡子
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 戸籍に記載されないままに育つ「無戸籍」の存在が認知されるようになってきた。井戸まさえさんは、自身の子が無戸籍になったことをきっかけに、20年前からこの問題と向き合っている。無戸籍の裏にある戸籍とは一体なんなのか。そして、戸籍が映し出す日本社会とは。

民法772条による無戸籍児家族の会代表・井戸まさえさん

 1965年生まれ。東洋経済新報社を経て兵庫県議を2期。2009年から民主党衆院議員を1期。著書に「無戸籍の日本人」「日本の無戸籍者」など。

 ――「無戸籍」の人は今、日本にどれぐらいいるのでしょうか。

 「法務省が把握しているのは、3月10日時点で全国に832人、という数字です。ただ、司法統計をたどると、戸籍を取るための調停などで不成立となったケースが年間約500件あります。積み重ねると、直近の20年で少なくとも1万人は無戸籍の人が出ていることになります」

 「もともと、どこにも登録されていない人たちなので、自治体などが人数を把握するのは難しい。人数すら分からないことこそが、問題の本質にあります。目の前に子どもはいるのに、いないことになっているのが無戸籍なのです」

 ――日本の戸籍制度は世界の登録制度のなかでも、よく整っていると聞きますが、なぜ多くの無戸籍が生まれるのですか。

 「民法772条が壁となるケースが一番多いです。母親が離婚した後300日以内に子どもを産むと、実際にはそうでなくても、離婚した『前夫の子』とされる規定で、戸籍にそう記載されます。前夫と連絡をとって裁判所で自分の子であることを否認する手続きを取るなどすれば変更はできるのですが、DVなどさまざまな事情で前夫と連絡を取ることを避け、出生届を出さずに育てている現実があります。2月に法制審議会が再婚していれば離婚後300日以内に生まれた子でも現夫の子とできるという民法改正の要綱案をまとめましたが、離婚できていなかったり、前夫と連絡がとれなかったりすれば救われません」

 「虐待やネグレクトされて育った場合にも、無戸籍の人がいます。親である自分が無戸籍だから、子の戸籍も作れないという人もいます。片方の親が不法滞在の外国人で、発覚を恐れて出生届を出さないこともあります。親類のもとで育って、父母は両方とも行方不明という人もいる。実にさまざまな背景があるのです」

 ――無戸籍のままだと、生活上どのような問題が起きますか。

 無戸籍は、「女性に対する差別やバッシングの一つの表れとも言える」という井戸さん。戸籍に向き合うなかで見えてきたものは「根本に流れる差別意識」でした。記事後半で解説します。

「それは離婚のペナルティーです」

 「戸籍もさることながら、生…

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