ウクライナ侵攻でかすむ脱炭素 IPCC警告も化石燃料投資の動き

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長崎潤一郎、ロンドン=和気真也 関根慎一、香取啓介、編集委員・石井徹
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 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、5日に公表した報告書で温室効果ガスの大胆な削減を求めた。だが足もとではウクライナ危機を受け、各国は石油や石炭などの確保に走るなど、温暖化対策とエネルギー需給の両立という難題に直面している。

 「ウクライナでの戦争は食糧とエネルギー価格の高騰を引き起こしている。しかし、化石燃料の増産は事態を悪化させるだけだ」。IPCCの第3作業部会による報告書の公表を受けて5日、国連のグテーレス事務総長はビデオメッセージでこう語った。

 報告書は、産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑えるには、2025年までに温室効果ガスの排出を減少に転じさせる必要があると指摘。化石燃料を使う火力発電所をこのまま使い続けると目標を達成できず、太陽光や風力の導入拡大を急ぐよう求めるなど強い警告を発した。

国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)

 1988年に設立され、195の国と地域が加盟する。各国政府推薦の科学者が温暖化に関する最新の研究成果を討議し、数年に一度、評価を報告書にまとめる。温暖化の科学的根拠を評価する第1、影響と適応の第2、温室効果ガスの削減策(緩和)についての第3の各部会に分かれる。これまでに5度、各部会の内容を一つにまとめた統合報告書が公表された。2007年にノーベル平和賞を受賞している。

 ロシアによるウクライナ侵攻で、世界のエネルギー情勢は一変した。ロシアへの経済制裁の影響で原油や天然ガスが高騰。欧州は中長期には脱炭素をめざすとしながらも、当面はエネルギーの安定供給を優先し、化石燃料へ新たに投資する動きを強めている。

 天然ガス輸入の4割をロシアに依存する欧州では、米国などからの液化天然ガス(LNG)の調達を増やそうとしている。天然ガスの55%(21年)をロシアに頼るドイツの危機感は強い。3月25日に公表した今後のエネルギー確保策では、ロシア依存度を24年までに10%に抑える道筋を描き、LNGの貯蔵庫などのインフラ整備を急ぐ。脱原発を進めるドイツでは、ロシアからの天然ガス供給が途絶える事態も想定し、石炭火力発電を増やせるように備える動きが出ている。

 ロシア産原油の輸入を年内にやめることを決めた英国は、北海油田を有効活用する策を発表。英BBCは英シェルが、いったん撤退を決めた北海のシェトランド諸島沖の油田開発を再検討していると報じた。米国も国内の石油企業に増産の号令をかける。

 エネルギーの安定供給を重視…

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