保津川に舞う最後の桜 74歳の船頭、船を降りる
筋野健太
江戸時代初期から続く京都の保津川下り。川に浮かぶ舟の低い位置から見上げると、緑色の山々の中に、白い桜の花がよく目立つ。
桜の時期は風が強い日が多く、時々桜吹雪が舟に降りかかる。
「本当にきれいですよ。でも、我々船頭がそう思えるのは一瞬です」
今年末で定年退職する船頭歴52年の上田次夫(つぎお)さん(74)でも、強風の日は舟が流されないように操るのに必死だ。舵(かじ)取り、棹(さお)差し、櫂(かい)引き、3人1組の船頭たちはお互いの呼吸を合わせて、急流を下っていく。1人でもぼーっとしていたら舟はうまく進まず、危険だ。
昭和40年代、船頭は地元・…
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