生みの親は別に…でも戸籍は「長男」 里親夫婦が始める「真実告知」
足立菜摘
「はじめまして。20歳のお誕生日おめでとう」
2枚の便箋(びんせん)に大きく丁寧な字でつづられた手紙は、こんなあいさつで始まっている。青空柄の封筒に、差出人や受取人の名前はない。
手紙は、松山市で美容師をしている蔵下誠さん(50)と由美さん(41)夫妻の長男、遥充(はるみ)くん(1)に宛てられたもの。あいさつの後、こう続く。
「育てられなくて、ごめんなさい」
夫妻の自宅1階の美容室で、由美さんがスマホで撮った戸籍を見せてくれた。
「長男:遥充」
その下の欄に、「民法817条―2による裁判確定日」と書かれている。
日付は今年2月のもの。この日、遥充くんは「特別養子縁組」という制度で、夫妻の実子になった。
「長男と書かれて、本当にうれしかった」
その日を思いかえす誠さんのひざの上で、遥充くんがじゅっじゅっと音を立てて哺乳瓶を吸っている。
「産んでも育てられない」
産婦人科を受診した女性が、そんな相談をすることがある。
経済的な困窮、性暴力による…
- 【視点】
日本は、里親になることや特別養子縁組をすることがとてもハードルが高い。もちろん、人の人生がかかっていることだから慎重に…とも思うが、それにしても、というほどに高いし、記事中にもあるように知られていない。元厚労相の塩崎恭久氏が里親になろうとし