地震で相次いだ天井落下 東日本大震災後、なぜ「既存不適格」のまま

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編集委員・石橋英昭
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 宮城、福島両県で震度6強を観測した3月16日夜中の地震では、音楽ホールや体育館など大型施設で天井板の落下が相次いだ。東日本大震災で同じ問題が指摘され、国は天井の基準を厳しくする対策をとったが、被害施設の多くはこの基準を満たさない「既存不適格」だった。危険な天井が放置されていたのは、なぜか。

 もし観客がいる時間帯なら、大惨事になるところだった。

 宮城県白石市の文化体育活動センター・ホワイトキューブ。610席あるコンサートホールでは、楕円(だえん)形(長径35メートル、短径22メートル)をした天井の半分ほどが落ちた。高さは11~12メートル。音響効果を高めるため、8ミリの石膏(せっこう)ボードを5枚貼り合わせた分厚い天井板で、1平方メートル当たりの重さは20キロ以上にもなる。

 このほか、仙台市太白区の市体育館(カメイアリーナ)では客席頭上の天井板12枚が落下。宮城県利府町の県総合運動公園・総合プールも、飛び込み台の上の天井が目視で20メートル×5メートルの範囲で落ちた。

 いずれも「つり天井」の構造で、屋根から長さ1~2メートルのつりボルトを下に伸ばし、石膏ボードを固定させる形だ。揺れの影響でつりボルトが破断したり、屋根の鉄骨との溶接部や天井板をはさむ金具部分がはずれたりしたという。

 大きな地震のたびに各地で被害が起きている。2011年の東日本大震災では2千カ所以上で天井が落下し、死者も出た。

 国土交通省は対策に乗り出し、14年に法令を改正。一定規模以上の建物のつり天井(特定天井)は従来以上の耐震性が必要だとし、つりボルトを増やしたり、金具の強度を高めたりすることを求める技術基準を定めた。既存の建物も増改築時に新基準を満たすか、ネットやワイヤなどの落下防止措置をとるようにした。

予算限られ対策追いつかず

 だが古い施設の多くは、予算の制約などから対策に至っていないのが現実だ。ホワイトキューブは築25年、県総合プールは27年、仙台市体育館は38年。同体育館は震災で天井の一部が落ちたが、脱落した部分の補強だけで済ませていた。市スポーツ振興課は「数年内に予定していた大規模改修時に、現在の基準に合わせた天井に総入れ替えする計画だった」と言う。

 白石市は、ホワイトキューブの被害額を8億円と見込む。災害復旧の場合、100%の起債が認められ、半額程度は国からの交付税で補助されるが、天井の構造や材料などを変えない原形復旧が原則だ。

 所管する市まちづくり推進課の担当者は「人命の安全を考えれば、元の天井に戻すことは考えられない」と頭を抱える。落下防止策を考えた「改良復旧」でも財政支援を受けられないか、今後、県や国に要望してゆくという。(編集委員・石橋英昭

 <東京大生産技術研究所の川…

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