山村に「シネマパラダイス」手作り 高野に23日開業

福田純也
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 和歌山県高野町富貴(ふき)地区で、朽ちかけた倉庫を住民たちが手を入れてホールに再生した。イタリア名画に出てくる映画館のように、みんなが楽しめる文化の場になればと願い、「フキシネマパラダイス」と名付けた。23日オープンする。

 標高600メートルほどの集落にある町立高野山小富貴分校近く。青いトタン屋根とイタリア語で「PARADISO」と書かれた看板が目を引く。

 青い扉から入ると、古びた柱や梁(はり)、つぎはいだような板壁が落ち着いた雰囲気を醸す。天井が吹き抜けになっているホール中央には、高さ約3メートルの映写台が置かれている。「ライオンの小部屋」と名付けられ、描かれたライオンの口からスクリーンに映写する。映画「ニューシネマパラダイス」をまねた。

 元々は小学校舎だった。倉庫となってからも使われなくなっていた木造平屋(約200平方メートル)の東側半分を修理した。

 「昔の映画館の雰囲気で、映画が時々楽しめたらいいなあ」。ホールへの再生には、地元で「やきもちカフェ」を運営するなど住民交流の活動を続ける上辻孝一(たかかず)さん(74)、淑子(としこ)さん(76)夫妻の熱い思いがきっかけだ。

 絵本作家の淑子さんは小学生の頃、海南市で映写技師をしていた兄が働く映画館に通い詰め、映画が好きになった。映写技師と少年の交流も描かれる「ニューシネマパラダイス」は自身の幼い頃に重なり、大ファンという。

 2年近く前、兄が遊びに来て夫妻と食事をしたとき、「昔の映画館をつくりたいね」との思いで意気投合した。孝一さんが倉庫の所有者に頼むと借りることができた。

 孝一さんは病院の臨床検査技師を退職後、ログハウスを10年かけて自分で建てた経験がある。昨夏、修理に着手。材木を切り出して製材し、屋根以外は自前で手がけた。多くの住民も手弁当で手伝ってくれ、いすなどの備品を寄付してくれた。個性的な看板の絵などは淑子さんが描いたものだ。夫妻は「映画のように住民が楽しめて、外の世界を感じられる場になれば」と期待する。

 地区には最近、子育て家庭が相次いで移住してきた。夫妻はホールの運営を5世帯の移住者らに任せることにした。その代表で、橋本市から家族4人で昨春にやってきた会社員大谷剛志さん(38)は「富貴を盛り上げたい。富貴の魅力を発信する場にもしたい」と話す。

 23日のオープニングイベントは午前10時~午後3時。地元で活動する「ちいさな木一座」の人形劇、「ニューシネマパラダイス」の上映、移住者でフランス出身のチェリスト、ロビン・デュプイさんの演奏、飲食店の出店などを予定している。

 今後は月に1回程度、映画、演劇、音楽などのイベントを計画している。普段はワークショップや住民の憩いの場に活用する。イベントの入場は無料。1ドリンクを注文してもらい、代金はホールの運営費に充てるという。詳しくは「フキシネマパラダイス」のホームページで。(福田純也)