大リーガー新庄を誘拐? 幻に終わった映画制作 あるTVマンの回想
『SHINJO誘拐事件』
そんなドラマの企画書が私のもとに届いた。2007年の春のことだ。
SHINJOはもちろん新庄剛志・BIGBOSS。この半年前の06年10月、日米通算17年の現役生活を、日本ハムの外野手として日本シリーズ優勝で締めくくっていた。
一挙手一投足が注目を集める北海道日本ハムファイターズの新庄剛志監督。実は15年ほど前、BIGBOSSが監督として中東の野球チームを率いる奇想天外なドラマ、映画の制作をめざし、地元・HBC北海道放送のプロデューサー河野啓さんが奔走していました。河野さんが当時を振り返る全3回の連載。今回は第1回です。
送り主は東京に住むライター。以前、仕事で接点があった。「いやあ、新庄といえば北海道でしょう」。私が電話をすると、明るい声が返ってきた。
「私は雑文をこなすのに精一杯(せいいっぱい)なので、脚本はもっと優秀な方に頼んでください」
新庄さんが自ら、本人役で出演する想定だった。かなり無茶(むちゃ)な話ではないか?
「大丈夫。誘拐された設定ですから、シーン数は多くありません」。さらには、「私は見たいんです、このドラマが! 北海道の放送局がつくったら業界の大革命。やってください!」
一方的にまくし立てると、ライターは電話を切った。
BIGBOSS語録
北海道日本ハムファイターズの担当記者が、新監督に就任した「BIGBOSS」こと新庄剛志さんの発言や動向をリアルタイムでお伝えします。
「うーん」。A4サイズ5枚の企画書を読み返し、私は何度も唸(うな)った。《見たい》と思ってしまったのだ、私も……。
主人公は、ニューヨーク在住…