第1回「国恥地図」に秘められた帝国の記憶 世界秩序揺さぶる中国の歴史観

有料会員記事中国新世

北京=林望
[PR]

 「中国国恥地図」と題する一枚の古い地図がある。

 今から95年前、中国が列強の侵略を受けて半植民地状態にあった時代に、上海の中華書局という出版社が世に出したものだ。

 地図の桃色の部分は「現存する土地」、緑色は「失われた土地」、ダイダイ色は「重複する土地」とある。重複する土地とは、今の言葉でいえば複数の国の主張がぶつかる係争地くらいの意味だろうか。

 とりわけ目を引くのは、ほぼアジア全域を囲む青い線だ。北はシベリア南部や樺太、東は朝鮮半島や沖縄、台湾を取り込み、南はマラッカ海峡やネパールをかすめて、西はアフガニスタンやカスピ海東岸の中央アジアまで伸びている。いまの中華人民共和国の、ほぼ倍にあたる面積が囲われている。

 20世紀初めまで続いた王朝時代の中国と朝貢関係にあった国々が含まれていることは見て取れるが、「かつての国境」と記されたこの青い線について、地図は法的根拠も、いつの時代のものなのかも説明していない。

 「国恥」という激烈な名前をつけられたこの地図は何を伝えようとしているのか。

 地図は英ロンドン大学経済政…

この記事は有料会員記事です。残り1786文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【無料会員限定】スタンダードコース(月額1,980円)が3カ月間月額100円!詳しくはこちら

  • commentatorHeader
    倉田明子
    (東京外国語大学総合国際学研究院准教授)
    2022年4月22日10時44分 投稿
    【視点】

    このところ日本でにわかに注目を集めるようになった「国恥地図」ですが、記事中の「中国の学者が「地図と言うより当時の悲憤の発露」と位置づける代物」という表現がとてもしっくりくるモノです。 国恥地図を考える時には、これが中国の近代国家意識やナシ

  • commentatorHeader
    古谷浩一
    (朝日新聞論説委員=中国政治、日中)
    2022年4月21日14時52分 投稿
    【視点】

    悠久の中国の歴史のなかで、もっとも豊かだったのはいつの時代だったでしょうか。 いろいろな考えがあるかもしれませんが、答えの有力候補のひとつは宋(960~1270年)の時代ではないかと思います。 この時代に中国は経済的にも文化的にも大きく