桜舞う被災地、なりわいめぐる溝 原発処理水、海洋放出決定から1年
今泉奏
政府が1年前に決めた東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出。政府と東電がめざす開始時期が1年後に迫る中、「絶対反対」を貫く漁業者とは「超大型基金」の創設をめぐり、かみ合わない議論が続く。
10日午後、福島県富岡町では「桜まつり」が開かれていた。地元の一大イベントで、週末の2日間では東日本大震災以降、最多の約3万人が訪れた。翌11日には町内の帰還困難区域の一部で自宅などに寝泊まりできる「準備宿泊」が始まった。くらしを取り戻そうとする地域を、満開の桜が彩っていた。
そこから南に約4キロ。東京電力廃炉資料館の展示室では、汚染水を処理した水をためるタンクの映像が流れていた。「約1000基 約129万立方メートル」。いまの保管量だ。2023年春には、最大容量とする約137万トンに近づく見込みだ。
「超大型の基金」をめぐるズレ
萩生田光一経済産業相は12日の会見で、処理水の海洋放出について「風評を抑制するとともに、いただく声を受け止めつつ実効性のある対策を講じていきたい」と語った。
漁業者への対策として全国漁業協同組合連合会(全漁連)に示したのが、「超大型の基金」だった。
萩生田氏は5日、全漁連の岸…