第4回「中国船に海まで盗まれる」 立ち上がった漁師、でも魚を買うのは…

有料記事中国共産党大会2022

ナトゥナ諸島=半田尚子
【動画】南シナ海で緊張状態の中国とインドネシア。実態を漁業関係者に聞いた=リツキ・アクバル、半田尚子撮影
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 「チナ(中国)! チナ!」

 船体を水色のペンキで塗った漁船の上で漁師が声を上げた。釣り糸を巻き上げる別の漁師の向こうに、1隻の駆逐艦が見える。

 「船体番号は172」「海警局か?」「いや海軍だ」

 漁師たちの声が飛び交い、船上に緊迫した空気が走る。昨年9月、南シナ海に浮かぶインドネシア・ナトゥナ諸島沖で地元の漁師が撮影した53秒間の動画だ。

【連載】中国新世 帝国の残像

繰り返し現れる中国船に、インドネシア当局は対応しきれません。記事後半では、海を守るためにある自衛策を考えた地元漁師たちの活動や、強硬な態度をとる中国にあらがいきれない東南アジア各国の現状を報告します。

 10月から3月上旬までの時期、強い風にあおられて海は荒れ、波の高さは最大で7メートルに及ぶこともある。激しく揺れる漁船から届けられたこの映像は、瞬く間にネット上で拡散した。現場がインドネシアの排他的経済水域(EEZ)だったこともあって世論を刺激し、同国の海軍が出動する騒ぎとなった。

 中国が南シナ海での権益を主張するために引いた「9段線」はその形状から「牛の舌」とも言われ、インドネシアのEEZと重なっている。

地下資源のため? 豊かな漁場に伸びる「牛の舌」

 今年3月、記者はナトゥナ諸…

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    福田直之
    (朝日新聞コンテンツ編成本部次長=経済)
    2022年4月25日16時49分 投稿
    【視点】

     自国に対する相手の経済的な依存をテコに、相手に政治的な要求を認めさせるのが「エコノミック・ステイトクラフト(economic statecraft)」と呼ばれる手法です。テコになるのは金融的な依存もあれば、貿易、原材料の調達や生産などサプ

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    吉岡桂子
    (朝日新聞編集委員=中国など国際関係)
    2022年4月24日20時31分 投稿
    【視点】

    東南アジアの国々を中国に引き寄せる磁力の大きな要素が経済であるならば、米国はなにをしているのだろうか。TPP交渉にかかわった日本政府の関係者がそう、指摘していました。共通のルールをアジア・太平洋に作ろうとしてTPPをたちあげたはずが、トラン