国境を越えて隣国ウクライナへと侵攻し、街を、暮らしを破壊し、人々を虐殺する。ロシアの軍事行動に対して、これが現代に行われることか、と思う人が多いだろう。ロシアはなぜこうなのか。長年にわたりこの国の対外行動を見つめ、考えてきた岩下明裕さんに聞いた。
――ロシアはなぜ周辺国に力で踏み込むのでしょう。
「40年近くロシアを見てきましたが、あの国にはミッション(使命)があるんですね。自分たちは偉大である、偉大な民族である、責任があると。周りに対しても自分たちが導かなければいけない、みたいな思い込みがある」
「帝政ロシア時代も、共産党時代のソ連の時も、ロシア連邦になってからも、基本的に同じです。日本では大国主義はけしからんと言う。でもロシア人にそんなことを言っても、まず理解されない。当たり前じゃないか、みたいな感じ。それくらい染みついています。そうした思いをプーチン氏とその支持者が代表している。この責任と使命のもとで、お前たちウクライナを解放してやるんだと」
――やられる側にとってはたまりませんが。
「邪悪に向かわせる連中がいるから救ってやると。実際にはそこまで言いませんが、そういう感じです」
ロシアの気分を代弁すれば
――それは、何から何を救うのでしょう。
ロシアが言う「解放」は侵略だ、という岩下さん。北方領土問題についても「淡い期待は捨ててください」と言います。インタビュー後半で説明します。
「ウクライナは北大西洋条約…
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- 【視点】
「共産ソ連、いまのロシアと、ロシアは体制が変わってもなぜ専制的なのでしょう」ー記者のこの問いへの岩下氏の回答は重要だ。日々報道でロシア軍の残虐さを目の当たりにし、私たちはだんだん、ロシアという国家とその人々は、過去に類例がないほど残虐であり
- 【視点】
多くの市民の命を巻き込んでいる今回のロシアの暴挙は、決して容認できるものではありません。しかし、プーチン大統領はなぜそこまでするのか、その行動原理に迫ろうとすることは大切です。岩下明裕・前北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター長のご指摘は