カニとカニかまの間に エビカニ水族館長と「ほぼカニ」開発者が対談

有料会員記事

土井恵里奈
[PR]

 ああ、カニはなぜおいしいのか。高いのに……、ほぐすのが面倒なのに……。多くの人が愛してやまないカニの謎と魅力を、専門家2人がオンラインで語ります。対談するのは、和歌山県の「エビとカニの水族館」の平井厚志館長(38)と、カネテツデリカフーズ(本社・神戸市)のヒット商品カニかま「ほぼカニ」の開発を手がけた宮本裕志さん(50)。立場は違えど、ともに無数のカニを食べてきた2人です。

 平井 和歌山県すさみ町で水族館を運営しています。今まで70種類くらいのエビカニを食べてきました。

 漁師さんにもらったり、展示する前に死んだカニを食べたり。水族館の来館者からの質問は、「おいしい?」とか味にまつわるのが多くて。

「おいしい?」と聞かれるから

 私が一番おいしいと思うのはガザミ(ワタリガニの一種)。独特の甘みがある。大阪ではおなじみですよね。もちろん、ズワイやタラバもおいしい。

すさみ町立エビとカニの水族館 和歌山県南部にある太平洋に面した水族館。エビとカニを中心に、約150種を展示しており、365日年中無休で開館。館長の平井厚志さんは、海の生き物のエキスパートとして、カニのはさみに挟まれながらも、愛情深く飼育を続けている。水族館の隣の道の駅では地元でとれた海鮮を味わえる。

 宮本 ぼくは商品開発のために食べているので、ズワイガニ味のカニかまをつくる時はズワイばっかり。タラバ味のカニかまだとタラバばかり。会社の経費で食べまくってきました。

 平井 うらやましい。

 宮本 でも、開発中は苦しくて。本物のカニの味に迫るのは大変でした。期限が迫って、失踪してしまおうかと思ったこともあります。もう本能で食べていましたね。

連日試食、失踪寸前の苦しみ

 ずっと食べまくっていると、何の味か分からなくなってくる。途中で箸休めにコンビニアイスを食べてました。

 職場ではすでにゆでた身をほぐした状態のものが用意されているんですが、家では自分で殻から身をほぐさなきゃいけない。すごい面倒って思ってしまいました。

 平井 脚の接続部はパッと外れやすく、身をほぐしやすいですよ。僕はカニの標本をよく作りますが、その時も黙々とカニの身を抜かないといけない。

 しかも、そういうカニは古くて身が傷んでいるので、ほぐしても食べられないんですよね。

「ほぼカニ」 カネテツデリカフーズ(神戸市)のカニかま。ホロホロした食感と風味が本物そっくり。ユニークな商品名と「※カニではありません」の注意書きがSNSで話題になり、カニかまの主要な客層でなかった若者にも知られるようになった。テレビでも度々取り上げられ、高級品かそうでないかを見極める番組で出題されたこともある。

 宮本 以前、失敗をかましたことがあったなあ。取締役に出した試食のカニがちょっと古くなっていて。「酒かす入れてる?」て聞かれた。入れてないのに。

 ちなみに、さっきのガザミって、カニかまにしたら売れると思います?

 平井 思います。本当においしいので。高級品は、大阪などでは3万、4万円のコースで出てくるカニなんです。

 宮本 「幻のほぼカニ」みたいにできたら。ちなみに、水族館によくいるタカアシガニはおいしいですか。

 平井 水っぽいので、ゆでるといまいち。でも、蒸したり、足をレンジでチンすると意外とおいしい。

 宮本 タカアシガニのカニかまにもチャレンジしたいですね。関西って、かに道楽とかもあって、カニにすごくなじみがある地域ですよね。

 平井 うちの水族館のお客さんも、大阪とか関西がほとんど。生態を解説していても、半分くらい味の話になっていく。

味覚の謎、だまされる幸せ

 宮本 味って、メンタルに左右されるんです。「ほぼカニ」を開発した時、本物のカニの味の成分を調べたんです。アミノ酸を分析して、そっくりなカニかまを試作して。

 でも、全然おいしくない。困りましたよ。

 実は本物のカニって、磯臭さがある。でも、人がカニを食べると、それをあまり感じない。

 高価なカニを食べる時って、家族と出かけた旅先とか、ちょっと特別な日。いい思い出と結びつきやすく、実際よりもうま味を強く感じやすい。

 高価さに、みんな良い意味でだまされて、おいしく感じる。

なぜ、本物のカニそっくりの成分にしたのにおいしくないの? 人間の味覚とカニの味をめぐる驚きの実態は、記事後半で。

 実は、「ほぼカニ」はうま味…

この記事は有料会員記事です。残り1567文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【無料会員限定】スタンダードコース(月額1,980円)が3カ月間月額100円!詳しくはこちら