水俣の悲劇、一人芝居で伝える 小川町で16、23日

永沼仁
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 水俣病をテーマにした一人芝居「天の魚(いお)」が、埼玉県小川町角山の「岩田古民家やしきぼっこ」で16、23日に上演される。コロナ禍で延期されていたもので、演じる俳優江良(えら)潤さん(71)は「水俣の悲劇を描いた芝居を見ることは、原発事故や戦争などの不条理に目を向けることにもつながる」と語る。

 天の魚は、作家の故・石牟礼道子さんの「苦海浄土」を原作に、俳優の故・砂田明さんが構成・脚色した作品。砂田さんが自ら仮面をつけた姿で舞台にのぼり、1979~92年、全国各地で556回上演した。

 この芝居を、江良さんは2017年に引き継いだ。砂田さんを支援してきた写真家の宮本成美さんから頼まれたという。「福島の原発事故が起き、何もできない自分に悶々(もんもん)としていた。国策により被害者が出た構図は、水俣の公害も原発事故も同じ。この問題を忘れないために演じたかった」

 主人公は、胎児性水俣病の孫を持つ老漁師。江良さんは砂田さんとは異なり、素顔で演じている。

 工場廃水が引き起こした水俣病の苦しみ、海の恵みの尊さなどを1時間ほど語る。衣装は、被害者が原因企業を糾弾したイメージをもとに白装束姿とした。

 劇の最後、主人公は国家に立ち向かうことを宣言する。「砂田さんの芝居にはないシーンだが、70年代の社会の空気、民衆のパワーを伝えたかった」という。

 これまで東京や熊本県・水俣などで上演し、小川町では2年ぶり。会場は築120年の改装した古民家だ。「朽ちた感じが漁師の家のようで、舞台としては最高の条件。できれば毎年やっていきたい」という。

 今月2日から毎週土曜日に上演してきた。入場料は2500円だが高校生以下は無料。予約制で、問い合わせは時来社(03・3920・5660)へ。(永沼仁)