戦うべきか、戦わざるべきか ウクライナ侵攻が問う戦後日本の平和論

有料記事ウクライナ情勢

聞き手 シニアエディター・尾沢智史 聞き手・刀祢館正明
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 ロシアの侵攻に対し、ウクライナ国民が一丸となって抗戦している。一方で、激戦により多数の犠牲が出て、虐殺の報告もある。侵略を受けた時、戦うべきか、戦わざるべきか。

脅しに屈してルールをまげると禍根を残す 国際政治学者・篠田英朗さん

 日本では、「これ以上犠牲者を出さないためにウクライナは降伏するべきだ」という声があります。一般論としての「ひとりの命は大切だ」に反対する人はいません。しかし、それをどう政策的に実現していくかは、別の次元で考えなくてはいけません。

 軍事で、どれだけの犠牲者が出るかを正確に予測することは不可能です。いくらシミュレーションを重ねても、かならず不確定要素は残る。特に突然、他国から侵略されたような場合には、誰がやっても判断はきわめて困難です。

 侵略に武力で対抗すべきかどうかは、ゼレンスキー大統領も悩んだはずです。英国議会で演説したとき、「ハムレット」の「生きるべきか、死ぬべきか」を引用し、「問いは13日間続いたが、今は明白な答えが出せる。イエス、生きるべきだ」と言いました。自分だって迷ったが、こう決めた、国民もそれを支持しているということを、非常に簡潔に、力強く訴えた。

 ゼレンスキー氏の判断を、国際政治学者の多くは妥当だと考えています。すでに、ロシアが占領していた地域で多くの人々が虐殺されたことがわかっています。降伏した場合の占領下での犠牲者が、戦った場合の犠牲者より確実に少ないとは言えません。

 ウクライナでは、大統領の方針を9割の国民が支持しています。多くの一般市民が命をかけて、自分の国と国際社会の秩序を守っている。当事者が苦悩の末にそういう選択をした以上、それに対して敬意を払うべきでしょう。

 記事後半では、映画監督の想田和弘さんが「戦争になっても、私は銃を取らない」との考えを述べます。社会学者の山本昭宏さんは、厭戦の心情を公の場で出しにくくなった今の日本社会について語ります。

 他国から侵略されたとき、徹…

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