「やりたくないです」当日朝、揺れた思い 高校ラグビー「幻の決勝」

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高橋健人
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 ドアがたたかれる音で目を覚ました。

 3月30日午後11時半ごろ。報徳学園ラグビー部主将のフランカー植浦慎仁(しんじ)(3年)は、ホテルのベッドで眠っていた。

 翌31日午前11時から、埼玉県熊谷市で東福岡との全国高校選抜大会決勝が控えていた。兵庫代表の報徳学園にとっては初の決勝進出だった。

 早く体を休めたかった。

 ノックをした副主将の木谷光(3年)がドアの先で顔をこわばらせていた。

 「決勝、なくなったで」

 「えっ?」

 東福岡がそれまでに戦ったチームの中から新型コロナウイルスの陽性者が出たため、「濃厚接触者の疑い」があるとして大会側から辞退勧告を受けたのだ。

 決勝が中止になり、不戦勝となった報徳学園の初優勝が決まった。

 冬の全国高校大会を含め、高校の頂点に立ったのは創部70年で初めてだった。

 2人は声をそろえた。

 「試合、やりたかったな」

 植浦は兵庫県芦屋市出身。ラグビースクールに通っていた中学時代に報徳学園にあこがれ、入学を決めた。「地元の兵庫で日本一になる」のが夢だった。

 夢はかなった。だが、ずっと描いてきたイメージとは違った。

 31日午前7時ごろ。西條裕朗(さいじょうゆうろう)監督(59)は約30人の選手たちを公園に集めて告げた。

 「練習試合をすることはできる」

 そして、続けた。

 「君たちが決めなさい」…

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