「地震のたびに不安になる」 農業支えるため池、防災対策は道半ば

有料会員記事

荒海謙一
[PR]

 河川に乏しい地域の農業に欠かせない「ため池」。水を確保するため人工的に造られたものだが、地震や豪雨でひとたび決壊すれば被害は大きい。2018年の西日本豪雨を機に国や自治体が安全対策を進める中、3月16日には福島県沖を震源とする最大震度6強の地震が発生した。対策の現状を見た。

 農林水産省によると、3月の地震では、決壊時に人的被害が出る恐れがあると都道府県が選定した「防災重点ため池」のうち、福島、宮城、岩手3県の計43カ所で軽微な損傷などがあった。いずれも大事には至らなかったが、11年の東日本大震災では福島県須賀川市の「藤沼湖」が決壊して約150万トンの水が下流に押し寄せ、7人が死亡、1人が行方不明になった。

 藤沼湖は耐震性などを高めて16年に復旧し、異常がないかを絶えず確認する管理棟も新設された。3月の地震でも問題なかったが、「地震のたびに不安になる」と同市長沼の会社員森清道さん(66)は話す。下流1・5キロほどの集落にあった自宅が流され、「決壊なんて思ってもいなかった。トラウマになった」。

 被災した住民らの証言などを集めて、この3月に刊行された記録誌「あの日を忘れない~そして語り継ぐ未来へ」には、とっさに何が起きたか分からずパニックになった話もつづられている。記録誌づくりに奔走した地元区長の柏村国博さん(66)は「どこにどんな危険があるのかを、ふだんから知っておくことも大事な教訓です」と言う。

 18年の西日本豪雨では、決壊して死者も出た広島県内のため池が、防災重点ため池の選定から漏れていたことも判明。国は浸水区域も想定した新たな基準を公表し、全国で約1万1400カ所だった防災重点ため池は、約6万3700カ所に急増した。

 翌19年には、ため池の届け出制などを定めた管理保全法が、20年には防災工事などを集中的に進める特別措置法が相次いで施行された。東日本大震災から10年近くが過ぎ、ようやく体制が整った形だ。だが課題はまだ少なくない。

進む老朽化、補修にも手が回らず…

 農水省の調査によると、ため…

この記事は有料会員記事です。残り518文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【7/11〆切】スタンダードコース(月額1,980円)が今なら2カ月間無料!詳しくはこちら