太陽の光集めた「金色カーテン」 黄ニラに魅了された脱サラ大使

吉川喬
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 緑色の畑や山々に、金色のカーテンがかかっているかのようだ。岡山市北区牟佐の田園地帯で、天日干しされた黄ニラが太陽の光を集めて輝いていた。岡山で明治初期から栽培され、全国の作付面積の9割を占めるとされる逸品だ。

 栽培には手間がかかる。ニラを2年間ほど育てて根に養分を蓄えさせた上で、一度刈り取る。その後、黒いシートをかぶせて日光をさえぎると、数週間で黄ニラができる。

 冬場が旬だが、年中収穫できる。出荷直前に太陽光にさらすと、さらに黄色が濃くなる。ニラの辛みを帯びつつ独特の甘みもあり、食感はシャキシャキだ。

 「この風景と味にほれました」。黄色の作業着姿の植田輝義さん(47)は畑に目をやった。

 兵庫県出身だが、妻の実家が牟佐の黄ニラ農家だった。訪ねた際に金色のカーテンの美しさに魅せられた。黄ニラのみそ汁をふるまわれた。「こんなにおいしいものがあったのか」。鉄鋼会社を辞し、黄ニラに人生をかけると決めた。

 ただ、就農した1999年当時、中華料理の食材として関東に出荷されるのがほとんど。県内でも存在を知らない人が多かった。

 「地元で愛されて、はじめて本当の特産品になれるのでは」。知名度を上げるため、メニュー化を求めて飲食店を訪ね歩いた。自ら「黄ニラ大使」を名乗ってPRイベントを展開。そのかいもあってか、特産として県内外で知られるようになり、県内や関西での消費も増えてきたという。

 そんな黄ニラを多彩な料理で楽しめる店がある。

 岡山市北区柳町2丁目の「岡山料理専門店 cooking of art Ikiya」だ。握りずしや浅漬け、春巻きなど常時13種以上を提供している。

 そのまま刻んだ「刺身」(税込み550円)。弾力のある歯ごたえの後、辛みと甘みが徐々に広がる。続いて「ぞうすい」(同740円)。食感は残しつつ、まろやかな辛みが、かつおと昆布のダシと絶妙な風味を演出した。

 黄ニラは生・煮る・焼く、いずれの調理法でもおいしく、和洋中のどのジャンルの料理にも調和する――。小川隆行代表(53)はこう強調した。さらに、上品なレモンイエローが皿の上で料理の彩りを加えてくれるという。「使い勝手がよく、主役もはれる万能食材。岡山ならではの黄ニラをぜひ楽しんで」(吉川喬)

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 JA全農おかやまや県などによると、全国の作付面積のうち93%を岡山が占める。県内では1束200~300円ほどで販売。水気で傷みやすく、キッチンペーパーなどで包んで野菜室で保管すると良い。調理の際は火を通しすぎず、食感を残すのがポイント。

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