原発事故の指定廃棄物、茨城県内3千トン超なお見えぬ処理

福田祥史
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 東京電力福島第一原発事故で出た放射性物質に汚染された茨城県内の指定廃棄物などの処理が、まったく進んでいない。14市町の15カ所に当初からの計3643トンが「一時保管」されたままだ。事故から11年が過ぎても解決の見通しは立たず、住民らの不安は続く。(福田祥史)

 「いつまで置いておくのか。早く撤去してほしい」

 龍ケ崎市北東部にある龍ケ崎地方塵芥(じんかい)処理組合の清掃工場「くりーんプラザ・龍」で昨年10月、指定廃棄物をめぐる住民説明会が開かれた。組合を構成する同市と利根、河内両町の首長のほか、環境省と県の担当者も出席する中、住民たちから厳しい声が上がった。

 敷地内には、原発事故があった2011年の7~9月に発生した指定廃棄物181・5トンが、鉄筋コンクリート造りの専用保管庫内に残されている。

 保管について組合は、地元住民による「板橋地区環境整備委員会」との間で、12年11月以来3年ごとに文書で協定を結び、安全対策などを約束して同意を得てきた。今回の説明会は、4度目となる協定に向けて約5年4カ月ぶりに開かれ、保管の現状や指定解除の仕組みが説明された。

 出席者によると、撤去を迫る住民らに対し、組合側は「国、県の協力を仰ぎながら早期撤去を目指す」と回答。国側も「県、組合と協力していく」と応じたものの、具体的な時期や道筋は示されなかったという。

 指定廃棄物のうち時間が経って放射能濃度が基準値を下回ったものは、指定を解除して一般のごみと同じように処理できる。

 環境省は、16年3月から1年かけて県内14市町に保管されている指定廃棄物などを再測定した。その結果、3643トンのうち8割が基準を下回っており、基準を超えるのは612・3トンまで減っていた。龍ケ崎でも3分の2強が基準以下だった。だが、指定が解除されて処理された例は、県内ではまだない。

 説明会の3週間後に結ばれた新たな協定は、住民側の求めで、指定廃棄物の保管が最終的なものではなく一時保管であることを初めて明記し、指定が解除された場合も地区内では処理せずに撤去するとの項目を加えた。敷地内にある最終処分場に埋められるのを阻止するためだ。

 環境整備委員会の堀口至会長(72)は「基準値以下になったからといって、このままここで処分されては困るので、協定を変えた。とにかく早く撤去してもらいたい」と話す。

 住民らの不安の一つが地下水の安全性だ。地区は上水道が未整備で、大半の世帯が井戸水を使っている。組合は定期的に約70軒の井戸水の放射能測定をしているが、住民の一人は「放射能濃度の高い廃棄物が埋められると、地下水の汚染が一番怖い」と話す。

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 指定廃棄物の指定解除と処理が進まないのは、解除後にどこで処理するかが決まらないからだ。

 指定解除は国と自治体などの一時保管者らが協議しながら進めることになっている。解除後は自治体などが責任を持ち、既存の処分場などに埋めることができるが、地元での処理を拒んでいるのは、龍ケ崎に限ったことではない。

 阿見町が保管する159・4トンは再測定の結果、すべて基準以下になったとされたが、町の担当者は「解除を申請する予定はない」という。町内には自前の最終処分場があるが、「地元の不安もあり、そこに入れる考えはない」。

 指定解除後の処理先の確保について、環境省は通知で「(自治体など)処理責任者において進める」としている。だが、ある自治体関係者は「一度指定廃棄物になったものを『持ってきていいですよ』とは、どこも言わない。名前が挙がった途端に猛反発が起きる」と指摘。「探すこともしていない」と明かす。環境省の担当者は「農業が重要産業の茨城では、風評被害に対し、より慎重な面がある」としつつ、「いろいろ検討はしている。福島県がまだ完全に収束した状況ではなく、その様子や他県の状況を見つつ試行錯誤している」と説明する。

 長引く一時保管で懸念されるのは、地震や台風、竜巻などの災害による飛散や流出だ。国は保管状況を見ながら、龍ケ崎や阿見など5カ所で専用の保管庫を建設。他の場所についても遮蔽(しゃへい)の強化などをした。現在も定期的に保管庫周辺の空間放射線量の測定や保管状態の確認をし、「とりあえず安心な、安定した保管を続けている」とする。

 ただ、現場では気が抜けない状況が続く。ある保管担当者は「地震や台風のたびに駆けつける」。県内で最大震度5弱を観測した3月16日深夜も、懐中電灯で照らしながら異常がないか点検したという。

指定廃棄物をめぐる経緯

2011年3月 福島第一原発事故

     6月 東京都内の清掃工場の焼却灰から高濃度の放射性セシウム検出。国は15都県に1キロあたり8千ベクレルを超えた場合は一時保管するよう通知

     8月 指定廃棄物などについて定めた放射性物質汚染対処特措法が公布

  12年9月 国が茨城県内の最終処分場候補地として高萩市の国有地を選定。地元の反発を受け、13年2月に選定やり直しを発表

  16年2月 国が指定解除の仕組みを示し、それまでの各県1カ所集約保管の方針を転換、分散保管を容認。県内では「現地保管継続・段階的処理」となる。ただ、長期間経っても放射能濃度が高いままの指定廃棄物については、各県1カ所に集約する方針のままだ

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 指定廃棄物 原発事故で放射性物質に汚染されたごみの焼却灰や下水汚泥などのうち、セシウム134とセシウム137の放射能濃度の合計が1キロあたり8千ベクレルを超えるもの。自治体などの申請で環境相が指定し、国の責任で処理する。茨城県内では3535・7トンが指定され、未指定だが8千ベクレルを超えたものが107・3トンある。

 放射性物質には半減期があり、時間とともに濃度が低くなる。再測定結果をもとに推計すると、県内で8千ベクレルを超えるものは2022年に18・2トン、27年には0・4トンまで減るが、長期にわたって残るものもあるとされる。

 他県では、千葉市が保管していた全7・7トンの指定が16年に解除されたほか、宮城県栃木県でも解除・処理された例があるものの、昨年末時点で、福島県を含めた10都県に計38万5793・1トンが残る。