亡き夫に会いに 大崎・化女沼 植樹した桜育つ

三井新
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 宮城県大崎市の化女沼(けじょぬま)のほとりに咲いた1本の桜には、夫の名を記したプレートがまき付けられている。栗原市の三塚(みつづか)省子(せいこ)さん(74)は大きくなっていく木を眺め、季節の移り変わりを感じてきた。「立派に育ったよ、お父さん」。今年も語りかけた。

 三塚さんの夫、敬之助さんは、化女沼を桜の名所にしようと、1999年につくられた市民団体「化女沼2000本桜の会」(大崎市)の一員だった。周辺の環境を整備し、植樹活動を動画に記録していた。

 だが、2011年に肺がんと診断される。入院して3日後に震災が起き、予定していた入院生活を送れないまま、4月11日に亡くなった。71歳だった。

 同会の佐々木哲朗会長(69)は「すごく熱心で、律義な方だった」。同会は震災関連で亡くなった人を悼むため、12年4月から化女沼に「鎮魂の桜」を植え始めた。省子さんはこの時初めて植樹に参加し、その1本に夫のプレートをまいた。活動を引き継ぐ決意だった。

 それから年に数回、植えた桜を訪ねている。季節によって表情が変わるのを見ると、夫は今も生きているように感じられ、当たり前のようにあった2人の時間が戻ってくる。生前は言えなかったことも、木を通してなら伝えられる。夫がつないでくれた桜や友人たちのおかげで、今の人生は充実しているから。「お父さん、ありがとう」

 会が植えた桜は約2900本になった。(三井新)