「おとん」がいなくなった中1の夏、先生がくれた小さな贈り物

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岡純太郎
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 長年かけて水晶や恐竜の化石を収集している男性が、大阪にいる。孫のためにと始めたコレクションだが、続けるうちに中学1年のある日の記憶がよみがえった。父の死と、先生がくれた小さな贈り物……。

 案内された6畳の部屋には、足の踏み場もないほどにプラスチックやガラスのケースが積み上げられていた。一つをのぞき込むと、ピンクや紫、緑の水晶がびっしりと並び、その透き通った輝きに引き込まれた。

 ここは大阪府枚方市に住む井上豊さん(75)の自宅の居間だ。

 井上さんは海上保安官として全国各地で約40年勤務し、退職前は神戸海上保安部の次長を務めた。その傍らで、非営利団体のキャンプイベントを手伝うなど子どもに関わるボランティア活動も続けてきた。

 コレクションのきっかけは定年まで5年を残していた2002年ごろ。小学校高学年になった孫に古生物や恐竜の化石、鉱物、隕石(いんせき)などをプレゼントし始めたことだった。

 「趣味を持ってほしい」と月1回のペースで買い集めて贈るうちに、子どもの頃の遠い記憶がよみがえってきた。

 京都市に住んでいた中1の夏、井上さんは交通事故で父の政一さんを亡くした。夏休み中の7月、自転車で職場から帰宅途中に車にはねられた。即死だったと母から聞いた。

 大正生まれの政一さんは陸軍兵士として中国に出征し、戦後は京都市内の運送会社の社員として働いた。休日には近くの桂川や繁華街の四条河原町に連れて行ってくれた。

 そんな家族思いの「おとん」が突然いなくなった。井上さんには、その夏休みの記憶がほとんど残っていない。

普段は明るい先生が…

 2学期の始業式の朝。学校に行くと、井上さんの机の上に珍しい色をした小さな石が一つ置いてあった。何かと思って手に取ると、担任だった20代の男の先生がやってきた。

 普段は明るく気さくな先生な…

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