持続可能な「樵木林業」復活で森林関係人口づくりへ 徳島・美波町

斉藤智子
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 備長炭や薪に最適なウバメガシやカシなどの常緑照葉樹林が広がる徳島県南部の美波町で、昨春に発足した会社が地元の伝統的な「樵木(こりき)林業」による薪炭産業を復活させる取り組みを進めている。商品をブランド化して全国に売り出すとともに、持続可能な基幹産業に育て、移住者を呼び込む狙いがある。

 樵木林業は、薪や炭に適した太さに育った幹を選んで切ると、切り株からたくさんの芽が再び伸び出して育つ「萌芽(ほうが)更新」の手法を利用。芽が成長後には再び伐採できる。十数年のサイクルで樹木が若返るため、風害による倒木防止にも役立つという。美波、牟岐両町では、江戸時代から昭和40年代ごろまで盛んに行われ、関西都市部の燃料需要を支えてきた。2018年には日本森林学会の「林業遺産」に登録された。

 この樵木林業を復活させようと取り組むのが、昨年4月にできた「四国の右下 木の会社」だ。森づくりから炭焼き、「樵木備長炭」「樵木薪」のブランド製品販売まで一貫して行う。賛同して一緒に事業に携わる個人林業家も含めて約10人のメンバーがおり、大半は移住者という。

 会社を立ち上げたのは、地域活性化を支援する美波町の会社「あわえ」の吉田基晴(もとはる)社長(50)。「あわえ」と吉田さんは、サテライトオフィスを構えるIT企業の社員と地域住民らのふれあいを描いた映画「波乗りオフィスへようこそ」のモデルだ。

 6年ほど前にUターンした吉田さんは、自宅のストーブ用の薪を確保しようとしたことがきっかけで、樵木林業を知った。「経済パフォーマンスが高く循環型で、今っぽく言うとSDGs。誇るべき歴史と技術。徳島の食材とも連動させてトップブランドにできる」と可能性を感じた。

 木の会社は昨年10月から本格稼働。美波町や個人の山の持ち主と契約を結び、作業道を造ったり、下草を刈ったりと山の手入れをしながら、資源量調査を始めた。同時に、薪づくりや炭窯建築も進めている。

 薪は木を切り出して割ってから1年ほど乾かすため、今秋から販売開始の予定。炭焼きも今年10月から5トン窯2基で始める計画だ。最初の1年間で薪100トン、備長炭25トンの生産を見込む。10年後には製炭士20人が生計を立てられることが目標だ。来年はシイタケなど徳島の誇る食材を炭と薪で料理するレストランを、3年以内には薪ストーブ付き集合住宅の展開も目指している。

 吉田さんは「移住者の憧れの仕事の一つとして、地方創生の受け皿にもなり得る。100年の産業、森を中心に人が集まってなりわいができる『森林関係人口』のモデルをつくりたい」と意気込む。(斉藤智子)